【著者に訊け】林典子氏/『フォトジャーナリストの視点』/雷鳥社/1500円+税
デジカメやSNSの普及により、誰もが写真を撮り、発信も可能になった時代のフォトジャーナリスト論。このほど『フォトジャーナリストの視点』を上梓した林典子氏の場合、米国での大学在学中、西アフリカの小国ガンビアを研修で訪れたことが転機になった。
研修終了後も現地に残り、独立系新聞社The Pointで働き始めた彼女は、ジャメ政権(1994~2017年)の独裁下で言論の自由を奪われる中、命を賭して闘う同僚の姿を目の当たりにしたのだ。そんな彼らの志を継ぎ、今も内外を飛び回る林氏は、2014年の『フォト・ドキュメンタリー 人間の尊厳』(岩波新書)にこう書く。
〈世界中にはニュースにならない現実が溢れている。ほとんど取り上げられることのない社会の片隅で生きる人びとの物語を写真で伝えられるような仕事ができたら〉
それが彼女の原点であり、写真を撮る理由だった。
男性側の一方的な都合で結婚させられた花嫁たちの生活を追った『キルギスの誘拐結婚』や、ISに故郷を奪われた少数民族の密着記『ヤズディの祈り』など、被写体の日常や人生にこそ寄り添う林氏の作品群は、世界的にも評価が高い。