ゴールデンウィークの前半、4月29日に『Mr.サンデー』(フジテレビ)で、孤独死した50代男性ファンのために、地下アイドルが追悼ライブを行った様子が放送された。インターネット上でも大きく話題になったこの特集を、地下アイドルでライターの姫乃たまさんは「人ごとではないです」と思いながら見たという。「卒業」せずに年齢を重ねるファンのために、地下アイドルは何をするべきなのか、姫乃さんが「バブみ」をテーマにするようになった理由とともに語った。
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先日、デビュー9周年を迎えました。地下アイドルになってからもう、10年目になります。十代の頃は成人するまでに引退しようと思っていたので、短い期間をアイドルらしく駆け抜けなければと思い込んで、鬱っぽい日々を送っていました。しかし、活動期間が長くなるにつれて、アイドルらしくいることよりも、自分らしくいられることにこだわるようになって、いまでは自ら「地下アイドル」と名乗るのを止めています。自然体で活動を続けたことで文章を書く仕事が増えて、3年前に初めて単行本を出した頃から、アイドルライブに出演する機会がすっかり減ってしまったのです。
しかし、これまで地下アイドルとして活動しながら、地下アイドルについての文章を多く書いてきたので、メディアで紹介される時は、どうしても肩書きが「地下アイドル」になってしまいます。現役でしっかり地下アイドル活動をしている人たちがいる中で、地下アイドルらしい活動をあまりしていない私が「地下アイドル」と呼ばれることを、ずっと肩身狭く感じていました。
そのことでしばらく悩んでいたのですが、9周年の日をきっかけに地下アイドルを自称しなくなってから、反対に「地下アイドル」と呼んでもらうことに対しては何も思わなくなりました。私自身がどう考えていても、周囲の人たちや、特にファンの人たちにとっては、私が地下アイドルであることに変わりないからです。
これまで過ごしてきた9年という時間。これまでのことを振り返っていると、自分とファンのこれからにも思いが及びます。
地下アイドルは、ファンとの距離が近いところが特徴です。その近さを知らない人からすると、良くも悪くもちょっと驚くような交流もあります。この間は、悲しいけれど良いほうの交流が話題になりました。3月下旬に「アラサーロリータシンガーソングライター」の肩書きで活動している有坂愛海さんが、十年来のファンの追悼ライブを開催するとブログで発表したのです。
有坂さんは、10年前からほぼすべてのライブに来てくれていた50代の男性ファンが、手術後からSNSを更新せず、まったく姿を見せなくなったことを気にかけていました。同時に有坂さんは、家族よりも顔を合わせていた彼の住所すら知らなかったことに気が付いて、アイドルとファンの関係についていろいろと考えます。過去の予約メールなどを頼りにようやく彼の自宅を探し当てましたが、訪ねた先で、近所の人から彼が既に亡くなっていたことを知らされました。男性ファンは独身で、家族もおらず、最期を見送るお葬式もなかったことを知り、有坂さんは彼のために追悼ライブを行うことにしたのです。