銀歯にインプラント、部分入れ歯やブリッジ……中高年では、こうした歯が1本もない人のほうが珍しいだろう。ただ、“治療”したはずの歯が、さらに大きな問題の原因となることが少なくない。『やってはいけない歯科治療』(小学館新書)著者で、“歯科業界に最も嫌われるジャーナリスト”の異名を取る岩澤倫彦氏が患者に知らされてこなかった重大リスクをレポートする。昭和生まれの日本人にとっての定番虫歯治療方法だった「銀歯」を真っ二つに割ってみると、中では虫歯が再発していることもあるという。
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100年以上前から使われていた、アマルガムという銀歯がある。無機水銀と、銀や錫などの合金粉末を練り上げたペースト状のものを患部に詰め、患者の口の中で24時間かけて硬化、硬い“銀歯”となる。
材料費も安く、保険診療に使用され、一時期は虫歯治療の8割を占めていた。ところが──。
旧文部省が1989年に設置した研究班は、歯科治療で起きている金属アレルギーの大規模な疫学調査を行なった(研究班長・井上昌幸氏)。中山秀夫医師も研究班の顧問として参加した。
「歯に被せた金属が塩分で溶けて、それが体内に入れば、病気が出るだろう。それで歯科治療の金属アレルギーについて研究を始めたら、実に沢山の患者が出てきました」
中山医師は、原因不明とされていた掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)などの皮膚疾患が、水銀、銀、銅、パラジウム、亜鉛、錫、ニッケルなど、歯科治療で使用されている金属のアレルギーによるものがあると明らかにした。