病気になったら一刻も早く発症前の健康状態に戻したい──そう考えるのは“当然”であっても、“正解”とは限らない。治療を受けるか否かを判断する際に重要なファクターとなるのが「年齢」だ。
脳の血管の一部が風船のように膨らむ脳動脈瘤は、破裂するとくも膜下出血を引き起こす深刻な病だ。医師で医療ジャーナリストの富家孝氏がいう。
「症状の出ない未破裂の脳動脈瘤の有病率は5%ほど。脳ドックを受ければ20人に1人は見つかる」
70代の患者が脳動脈瘤を治療するか否かのポイントは「破裂」と「手術」のリスク比較だ。
「脳動脈瘤が破裂する確率は、瘤の発生場所と大きさにもよりますが、1年間で1%未満です。一方で開頭して瘤の根元をクリップで止める『クリッピング手術』で合併症が生じる確率は1.9~12%とされます。合併症は認知機能の低下や動作に支障が出るなどで、最悪の場合は寝たきり状態になることもある。
とくに70歳以上の高齢者は合併症の可能性が増すため、総合的なメリット・デメリットを考えると、手術の優位性が高いとは思いません」(同前)
※週刊ポスト2018年6月8日号