4月末の時点で61件、今年は過去最悪のペースでアニサキスという寄生虫による食中毒が起きている。魚に寄生しているアニサキスはマイナス20℃で24時間冷凍されれば死滅するが、死滅させる方法は、冷凍以外に加熱という方法もある。60℃で1分間、70℃で加熱すれば瞬時に死滅するという。だが、気をつけなければならないのは、カツオのタタキのように表面を炙っただけでは死なないということだ。
「最近、被害が増えているのがサンマです。以前は生で食べられることは少なく、主に焼き魚だったため食中毒がなかったが、刺身で食べられるようになってから増えています」(国立感染症研究所寄生動物部)
2012~2013年にかけて同研究所が調査したデータでは、アニサキスの被害全体のうちサバが34%で1位、サンマが11%で3位。
そこに割って入った(13%)のがイカである。寄生虫学が専門の宮崎大学医学部教授・丸山治彦氏が言う。
「イカの場合は、刺身だけ気をつければいいというわけではない。塩辛でも、新鮮な場合は気をつけてください。アニサキスは、寄生元の魚が死んでから日数が経てば死滅するので、瓶詰めの場合は大丈夫だと思いますが、お店の自家製など、加工したてのものの場合は、アニサキスがまだ生きている可能性があります」
サバの場合も、酢でしめただけのシメサバでは、アニサキスを死滅させることはできない。
魚の寄生虫被害はアニサキスが圧倒的に多いが、他にも寄生虫は存在する。今が旬で、居酒屋のお通しの定番でもあるホタルイカにはこんな虫が。
「アニサキスとは別の、旋尾線虫(せんびせんちゅう)の『タイプ10』と呼ばれる寄生虫の幼虫がいます。食物と一緒に摂取すると、胃や腸の壁を食い破って皮膚の下を這いずり回るので、お腹にミミズ腫れができて痛痒くて堪らないという事態に陥ります」(同前)
※週刊ポスト2018年6月8日号