病気になったら一刻も早く発症前の健康状態に戻したい──そう考えるのは“当然”であっても、“正解”とは限らない。治療を受けるか否かを判断する際に重要なファクターとなるのが「年齢」だ。
病気によっては加齢とともに進行が遅くなったり、治療の副作用が大きいため「あえて治さない」という決断が意味を持つケースがある。70代にもなると、生活習慣病対策も変わってくる。
脳血管障害などの原因のひとつとされるのが脂質異常症だ。血液中に含まれる脂質が過剰であったり、不足している状態を指す。
長らく「悪玉」と呼ばれるLDLコレステロールを下げると脂質異常症が改善するとされたが、現在では「下げすぎ」リスクが指摘されるようになった。医療経済ジャーナリストの室井一辰氏がいう。
「米国医療ディレクター協会は『余命が限られた人に安易にLDLコレステロールを下げる薬を処方してはならない』と注意喚起しています。LDLが不足すると病気が増えるとのエビデンスは今のところ存在せず、逆に高齢者はLDLが低いほど死亡率が高くなるという研究結果が出てきています」
日本ではLDLを下げる薬剤「スタチン」を処方するのが一般的だが、75歳以上の服用はリスクが大きい。
「スタチンの服用により吐き気や記憶障害、筋肉痛などの副作用が生じることがありますが、75歳以上についてはこれらの副作用に対する安全性が保証されていない。そのため、処方の際には慎重になるべきという見方が強い」(群星沖縄臨床研修センターの徳田安春医師)