音楽誌『BURRN!』編集長の広瀬和生氏は、1970年代からの落語ファンで、ほぼ毎日ナマの高座に接している。広瀬氏の週刊ポスト連載「落語の目利き」より、平成29年度花形演芸大賞の銀賞を受賞した「改作派」鈴々舎馬るこについて解説する。
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古典落語に時事ネタや飛び道具的ギャグをガンガン投入し、パワフルに押しまくる芸風で爆笑させる「改作派」鈴々舎馬るこが、平成29年度花形演芸大賞の銀賞を受賞した。
花形演芸大賞は国立劇場や国立演芸場などを運営する独立行政法人日本芸術文化振興会が若手芸人に与える賞で、大賞、金賞、銀賞の3段階。落語のほか色物も対象となる。
この賞をもらうためには、まず国立演芸場が毎月開く「花形演芸会」に出る必要がある。国立の演芸課が芸歴20年までの若手を選んで年に1回ずつこの会に出演させ、審査員(「演芸に造詣の深い方々」が年替わりで務めているという)が銀賞を選ぶ。今回は馬るこの他に桂福丸、桂佐ん吉、雷門小助六が受賞。銀賞を受賞すると以降10年「花形演芸会」のレギュラーとして年2回出演、そこで初めて金賞、大賞の対象者となる。発表は毎年3月末。今回の大賞は上方落語の笑福亭たまが受賞した。
若手落語家を対象とする賞は色々あるが、中で花形演芸大賞は「国が認めた」ものなので重みがあり、プロフィールに箔が付く。学校寄席など税金を使う地方公演に呼ばれやすくなる、とも聞いた。今は落語家の絶対数が多いだけに、若手にとって受賞は大きな意味があるだろう。
銀賞受賞後に初めて観た馬るこの高座は4月9日の「新ニッポンの話芸」。僕がプロデュースして成城ホールで不定期に開催する立川こしら、三遊亭萬橘、そして馬るこの3人会で、この日は馬るこがトリ。ちなみに萬橘は平成25年度に銀賞、翌年から今回まで4年連続で金賞受賞。凄いことだ。一方、こしらは「花形演芸会」に一度も呼ばれないまま芸歴20年を超えた。これもまた「落語界の異端児」こしららしい。