世界から首都圏への玄関口としては、成田空港と羽田空港以外に、成田から少し北にある茨城空港がある。ところが、都内への移動は、3時間に1本程度の連絡バス頼りで弱々しい。鉄道のアクセスをよくしようと、つくばエクスプレスを茨城空港へ延伸を目指す動きが始まった。ライターの小川裕夫氏が、その狙いと、なぜつくばエクスプレスなのかについてレポートする。
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訪日外国人観光客の増加が止まらない。当初、政府は2020年に年間2000万人という目標を掲げていたが、ビザの緩和や円安を追い風に、想定を上回るペースで達成した。先般、政府は2020年の目標を3000万人に上方修正。それも軽々クリアするとの予測が強まると、年間4000万人に再修正している。
人口減少で内需の先細りが確実視される中、年間4000万人もの訪日外国人観光客は日本経済を下支えする心強い“お客さん”でもある。
迎え入れる日本側には、課題が残されている。
多言語化やイスラム教徒に対するハラール対応といったソフト面の問題もあるが、なによりもハード面の観光インフラが脆弱なままだ。
6月15日から施行される住宅宿泊事業法は民泊を全国的に解禁するものだが、この法律が制定された背景も増加する観光客に対して宿泊インフラの整備が追いついていないからだ。
同様に、交通インフラの整備も追いついていない。
羽田・成田の航空需要が増大したことで、東京圏の上空は航空機による渋滞が慢性化。そのため、羽田や成田がターミナルや滑走路を増設しても意味がなく、飛行機の発着回数を増やせない状態にある。
国土交通省航空局は、羽田・成田で起きている空の渋滞を緩和するべく、航空機の進入経路の変更などで対応してきた。しかし、小手先のテクニックでは、抜本的な解決は望めない。そこで、羽田・成田と干渉しない、東京から近い第3の空港の整備が焦眉の課題になっている。
現在、東海道新幹線のトンネルの真上にあってアクセス良好の静岡空港と茨城県小美玉市にある茨城空港が有力候補として浮上している。しかし、どちらの空港にも一長一短があり、簡単には第3空港を決めるのは難しい。
静岡空港の場合、JR東海は静岡県にある6駅すべてを通過する「のぞみ」にリソースを傾注している。そのため、静岡駅に停車する新幹線の本数は少なく、まして「のぞみ」は一本も停車しない。静岡県は静岡空港の真下を通る新幹線に着目し、空港直結の新幹線新駅を開設するように要望している。しかし、東海道新幹線の現行ダイヤは過密なので、新駅を設置する余裕はなく、JR東海の対応はそっけない。
しかし、中央リニアが開業すれば、話は変わってくる。中央リニアが東京―名古屋間を結ぶようになれば、東海道新幹線のダイヤに余裕が生まれる。「のぞみ」の発着本数は減少するので、空いたリソースは「こだま」や「ひかり」に振り分けられるだろう。静岡空港駅が設置される可能性だって出てくる。
一方、2010年に自衛隊の百里基地を軍民両用化することで誕生した茨城空港は静岡空港よりも年間乗降客数が少ないものの、開港以降は国内線・国際線ともに乗降客数が激増している。
茨城空港は小美玉市に立地しているが、その泣き所は何と言っても空港アクセスが悪い点にある。茨城空港の最寄駅は市内にある常磐線の羽鳥駅だが、小さな駅のため空港玄関駅として利用しづらい。茨城空港利用者は、県内からなら水戸駅・石岡駅、近隣からの場合は東京駅・つくば駅・宇都宮駅などからバス利用になる。
そんな茨城空港のアクセスを改善するべく、小美玉市議会はつくばエクスプレス(TX)の茨城空港延伸の実現を目指す「TX茨城空港延伸議会期成同盟会」を発足させた。「従来、こうした鉄道の延伸を国などに働きかける期成同盟会は県や市が中心になって組織されます。今回発足したTX茨城空港延伸議会期成同盟会は、市議会が中心になっているのは異例です」と話すのは小美玉市議会事務局の担当者だ。