朝ドラ『半分、青い』でヒロイン・鈴愛が漫画家デビューを目指して奔走する姿に、世の女性たちが青春時代を思い出し、胸を熱くしている。小学生がなりたい職業で「ユーチューバー」が上位にランクインし、電車の中では大多数がスマホを見つめる現代もなお、少女漫画は愛される。少女漫画誌『ベツコミ』編集長の萩原綾乃さんが言う。
「少女漫画の在り方は、時代とともに変わってゆく。とくにこの10年は読者の求めるヒーロー像が多様化して、かつてのように背が高くてイケメンで、何でもできる男の子ばかりが人気ではない。多様化を象徴する代表例が『俺物語!!』(河原和音作・アルコ画)のいかつくてごつい主人公・剛田猛男です」
ヒーロー像の変化に伴い、恋愛におけるツールも変化してゆく。例えば、1976年に連載が始まった『ガラスの仮面』において、主人公のマヤは憧れの「紫のバラの人」から送られる手紙を心待ちにしている。それから40年、現在連載中の『夏に、ゆきが降るように。』(加賀やっこ作)のヒロインはLINEで相手にメッセージを送りすぎてしまうことに悩んでいる。
時代が移り変わっても女性が“恋”で悩んでいることは変わらない。少女漫画は時代時代の恋の悩みに寄り添っているのである。また、ネットが発達したことにより、男性読者も増えた。
「スマホで漫画が読める『マンガアプリ』は雑誌と違い、少年漫画と少女漫画の垣根がない。だから、男性読者が少年漫画をダウンロードしたついでに少女漫画を読むこともある。少女漫画の魅力を理解する乙女心を持った男性が増えているんです」(萩原さん)
なぜ私たちは、少女漫画を求めるのだろう。
少女漫画に影響を受けた精神科医・片田珠美さんは、「少女漫画の本質は“スティグマを負った人”を描くこと」と指摘する。
「“スティグマ”はもともと『刻印』を意味する言葉で、“スティグマを負った人”とは何らかの屈辱的な体験を抱えている人のこと。人はみな学校でいじめられたり、職場になじめなかったり、夫婦仲が冷え込んだりして、生きづらさや疎外感、そして『自分はこれでいいのだろうか』という葛藤も抱えています。そうした感情を描くことが少女漫画の本質なのです」
ヒロインが未来からきたアラサーの自分とともに、未来を変えようと悪戦苦闘する『こんな未来は聞いてない!!』の作者である八寿子さんは少女漫画の魅力は自分の感情を肯定できることだと言う。
「普段の暮らしで挫折や失恋などいろいろなことがあってもがき苦しみ、『私、間違っているのかな』と思って少女漫画に手を伸ばしたとき、『なんだ、間違ってないじゃん。みんなそう思っているんじゃん』と“答え合わせ”をして、元気になれるのが少女漫画の魅力です。読者のみなさんがその元気を日常生活に持ち帰って、すこしでも役立ててもらえたら本当に嬉しい。女の子だけでなく、男の子や年配のかたでも“乙女心”を持った人はみんな少女漫画の読者なんですよ」
※女性セブン2018年6月14日号