ここに掲載した女性たちの写真は、北朝鮮・平壌で撮影されたもの。写真家・初沢亜利氏の写真集『隣人、それから。』(徳間書店)では、2016~2018年に平壌、中朝国境、北部で撮影された一般市民の姿を見ることができる。
特に、金正恩・朝鮮労働党委員長の妻・李雪主氏や妹・金与正氏が外交舞台で活躍するように、街頭の女性たちも溌剌とした姿を見せ、男性以上にこの国の「主役」であることを印象づけていた。写真では、彼氏に囁かれて微笑む女性の表情に惹きつけられる。
「7度訪朝しましたが、2011年にはカップルが人前でイチャイチャするなんてありえなかった。それが今では街のあちこちで見かける。何が変わったかというと政権です。2013年に金正恩氏がお洒落した妻と腕を組んだ姿が北朝鮮のテレビで流れたんです。日本の専門家たちも驚きましたが、何よりも国民が『お洒落をしてもいいんだ、腕を組んでもいいんだ』と思ったのではないでしょうか」(初沢氏)
北朝鮮での撮影には常に案内人が同行し、被写体に目を光らせているが、信頼関係を築けたおかげで撮影できた写真も多いという。
「案内人が、我が国は貧しいけれど、一所懸命生きているということを伝えてくれれば問題ないと。お膳立ての上で撮ったものもありません。どの国にも日常はあるということです」(同前)
党や軍幹部の行事に華を添える「喜び組」が“北朝鮮女性の象徴”だった時代は変わりつつあるのかもしれない。
◆撮影/初沢亜利 写真集『隣人、それから。』(徳間書店)が発売中。
※週刊ポスト2018年6月15日号