心筋梗塞をはじめとする心臓病の後遺症として知られるのが「心臓神経症」だ。これは術後、再発に怯える恐怖心によって引き起こされるもので、胸の痛みや息切れなどが主な症状となる。2014年に急性心筋梗塞で入院し、大手術を受けた歌手の敏いとう氏(78)が言う。
「手術のおかげで、胸に重たいレンガが乗っているような気持ち悪さは消えたけど、その後に続いた“後遺症”には戸惑ったね。早朝に突然、胸に鋭い痛みが走って目が覚めるんだ。でも、起きると、痛みは消えちまう。夜、寝る前にも『あの痛みで目が覚めたら嫌だな』と考えてしまって、ストレスで寝入りも悪くなる」
秋津医院院長の秋津壽男氏によれば、過去に心筋梗塞を起こした人は、医者から「2度目は(命を)保証できない」と言われることが多いという。そのため、少しでも胸に違和感があると敏感に反応してしまう。
たとえ心臓が正常であっても、『もしかすると心筋梗塞の予兆かもしれない』と考えてしまうのだ。運動後の筋肉痛ですら、「発作の前ぶれかもしれない」と疑ってしまうこともある。
「そうした恐怖心が肥大すると、心臓神経症になりかねません。なんでも心臓の痛みのような気がして、落ち着いた日常生活が送れなくなり、ノイローゼのような症状を呈します」(秋津氏)
※週刊ポスト2018年6月15日号