高齢者や認知症患者の中には、入浴を嫌がる人も多いという。やっと入って出てくると「気持ちよかった」と喜ぶのに…。作業療法士・認知症ケア専門士の村島久美子さんに、家族が知っておきたい対策を聞いた。
◆服を脱ぐのも億劫…皮膚疾患がある場合も
「入浴を拒否、敬遠するのには、必ず理由があります。高齢になると、体を動かす、移動するなど、何をするにも疲れ、億劫になります。さらに手指の細かな動きが苦手になると、ボタンを外して服を脱ぐのもひと苦労なのです。
認知症の人に見られる被害妄想や幻視も理由になり得ます。服を盗まれる、見張られているなど、本人は入浴どころではありません。また、進行すると『入浴』という言葉と、入浴するイメージが一致しなくなります。何を言われたのかわからないまま服を脱がされるので、不快や恐怖を感じて拒否…という反応に。皮膚疾患で痛みやかゆみが生じている場合もあります。
認知症の人は、これらの気持ちや症状をその場で的確に説明できないことが多く、『いや!』という拒否だけが表に出ることになるのです」
◆記憶をカバーし、生活の流れを意識して話そう
「まずは本人の気持ちや、入りたくない理由をゆっくり丁寧に聞いてください。もし認知症による妄想や幻視が原因なら、たとえば服を濡れないようにして浴槽から見える場所に置く。幻視が起こりにくいよう浴室を明るくしたり、湯気がこもらないようにするなど、あらかじめ準備できることもあります。
入浴を嫌がられたご家族は、つい入浴のことだけを考えて悩み、“お風呂に入らないと汚いから”“入浴の時間だから”などと説得しがちです。でも入浴は生活の流れの中の1つ。
『今日はよく歩いて汗をかいたからお風呂でさっぱりして、冷たいものを飲みましょう』『夕飯を食べ終わったらゆっくりお風呂に入って。そうしたらよく眠れるよ』など、生活の流れの中で、入浴を『楽しみ』として誘ってみてください。
認知症があると、今日汗をかいたのを忘れていることもあるので、さり気なく記憶の抜け落ちをカバーし、本人が生活の流れの中にいることを意識して話しましょう」
※女性セブン2018年6月21日号