ライフ

【著者に訊け】三浦しをん 往復書簡で綴った新たな代表作

小説『ののはな通信』を上梓した三浦しをんさん(撮影/矢口和也)

【著者に訊け】三浦しをんさん/『ののはな通信』/KADOKAWA/1728円

【本の内容】
 ミッション系のお嬢様学校に通う高校2年生の野々原茜と牧田はな。グリコ・森永事件が世の中を騒がせていた昭和59年から物語は始まる。学校で起きた事件やテスト、将来のことから好きな漫画のことまで、日を置かずに手紙をやり取りする親友の2人はやがて恋人に。しかし、決定的な裏切りを経て、2人が40代に入った2010年代まで、運命の出会いがどのように人生を変容し、そして支えるのか。全編、2人の往復書簡で綴られる長編小説。

 女子高の同級生、野々原茜(のの)と、牧田はな(はな)。2人がかわす手紙というかたちで小説は進行する。高校時代に始まったやりとりは、卒業して進路が分かれ、大人になり遠く離れて暮らすようになってからも、2度の中断をはさんで続く。運命の相手に出会えた喜びや別れの苦しさ、彼女たちの人生そのものがその中にある。

「私自身、女子高だったんですけど、授業中、友達とずっとメモを回し、家に帰ると長電話してさらに手紙を書いて投函してました。何をそんなに話すことがあったんだという感じですけど、でも、いまの中学生や高校生も、LINEでやりとりとか、あまり変わらないのかもしれないです」

 成績優秀で、裕福ではない家庭に育ったののと、天真爛漫で、外交官の父を持つはな。性格も家庭環境も対照的な2人だ。

「『私たち、気が合うよね』みたいな、同質性がいちばん大事というふうにはしたくなかったんですね。相手のことを大切に思いつつ激しく衝突する、そういう間柄です」

 惹かれ合う2人の関係性は、ののの告白で親友から恋人へと変わるが、たがいの思いを確認した後に「裏切り」が明らかになる。「ののへ」「はなへ」と甘やかに始まったやりとりは、時に激しい思いをぶつけ、秘密を打ち明け、書いても出せなかった切ない手紙もある。

「思春期特有の『勘違い』などではなく、明確な恋愛として2人の関係を描いています。自分以外の他者を本当の意味で知る経験が、その後の2人を支え、かき乱す。彼女たちがその後、世界に相対するときの指針になります」

 昭和の終わりに始まったやりとりは2010年にはメールになる。40代になって、ののは東京、はなはアフリカで暮らすが、つらい恋の記憶はかけがえのないものとして、いつも彼女たちのそばにある。

「連載を始めたのは40代が目の前という時で、体調も悪くて、このままのペースで働いたら死んでしまうかもって弱気になってたんでしょうね(笑い)。せっかく女の人の話を書くなら、どういう生き方をすれば、人とどういう接し方ができればこの先の自分の希望になるだろう、って書くことを通して考えたかったんだと思います」

■取材・構成/佐久間文子

※女性セブン2018年6月21日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

紅白初出場のNumber_i
Number_iが紅白出場「去年は見る側だったので」記者会見で見せた笑顔 “経験者”として現場を盛り上げる
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
大村崑氏
九州場所を連日観戦の93歳・大村崑さん「溜席のSNS注目度」「女性客の多さ」に驚きを告白 盛り上がる館内の“若貴ブーム”の頃との違いを分析
NEWSポストセブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
佐々木朗希のメジャー挑戦を球界OBはどう見るか(時事通信フォト)
《これでいいのか?》佐々木朗希のメジャー挑戦「モヤモヤが残る」「いないほうがチームにプラス」「腰掛けの見本」…球界OBたちの手厳しい本音
週刊ポスト
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
電撃退団が大きな話題を呼んだ畠山氏。再びSNSで大きな話題に(時事通信社)
《大量の本人グッズをメルカリ出品疑惑》ヤクルト電撃退団の畠山和洋氏に「真相」を直撃「出てますよね、僕じゃないです」なかには中村悠平や内川聖一のサイン入りバットも…
NEWSポストセブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト
連日大盛況の九州場所。土俵周りで花を添える観客にも注目が(写真・JMPA)
九州場所「溜席の着物美人」とともに15日間皆勤の「ワンピース女性」 本人が明かす力士の浴衣地で洋服をつくる理由「同じものは一場所で二度着ることはない」
NEWSポストセブン
イギリス人女性はめげずにキャンペーンを続けている(SNSより)
《100人以上の大学生と寝た》「タダで行為できます」過激投稿のイギリス人女性(25)、今度はフィジーに入国するも強制送還へ 同国・副首相が声明を出す事態に発展
NEWSポストセブン