安倍晋三・首相は「北朝鮮に騙されるな」と国際社会に訴えてきた。北朝鮮には過去何度も「核放棄」を約束して援助だけ受け取り、裏で核開発を進めて他国を欺いてきた前科があるからだ。
「北朝鮮に全ての核・弾道ミサイル計画を完全に放棄させるためには対話ではなく圧力が必要だ」(国連演説)
それは正論だ。拉致被害者を「救う会」全国協議会副会長の島田洋一・福井県立大学教授が語る。
「拉致被害者の救出にも圧力しかない。リビアのケースが参考になります。米国が2003年にリビアと核放棄の交渉をしたとき、完全廃棄までは経済制裁を一切緩めず、支援もしない姿勢を貫いた。リビアは次第に音をあげ、制裁1か月目にはリビアが関与したパンナム機爆破テロ事件の犠牲者270人の遺族に27億ドルを支払うと約束した。核廃棄では譲りたくないから、人権問題で誠意を見せようとした。北朝鮮も核ミサイル問題で圧力を高めれば、核廃棄の前に解決しやすい拉致問題で必ず譲歩してくるはずです」
だからこそ、日本は“瀬取り”と呼ばれる経済制裁破りの海上での密輸行為を厳しく監視してきた。ところが、トランプ大統領が融和姿勢に傾くと、国際社会で逆に、“日本包囲網”が敷かれる現象が起きている。
米朝会談に直接関与できない中国、ロシアが、中断している北朝鮮と日米中露韓による「6か国協議」を再開して核ミサイル問題を話し合うことを強く提案しているのだ。武藤正敏・元駐韓大使が言う。