2016年に発覚した、川崎市幸区の有料老人ホーム「Sアミーユ川崎幸町」で入居者3人が相次いで転落死した事件で、横浜地裁は元施設職員の男に今年3月22日、求刑通り死刑を言い渡した(控訴中)。今年6月には、前橋市内の老人ホームに入居していた認知症の女性が行方不明になり死亡した事故をめぐって、遺族が施設を訴えたことが報じられた。
老人ホームではこうした事件・事故が後を絶たないが、表立って報道されるのは全体のごく一部かもしれない。介護評論家の佐藤恒伯氏が言う。
「厚労省は老人ホームで起きた事故に関する詳細な調査を行なっておらず、件数についても把握していません。つまり、全国の施設でどのような事故がどれくらい起きているのか、実態が分からないのが現状です」
厚労省は老人ホームに指導監督権を持つ自治体に対し、施設の運営会社に事故を報告させるよう指導している。にもかかわらず厚生労働省は、その報告をまとめた全国調査をしていないという。老人ホームの入居者やその家族にとって、どの地域でどのような事故がどれぐらい起きているのかの情報は極めて重要なのに、それを知る術がない。
そこで本誌・週刊ポスト取材班は、国に代わって「介護付き有料老人ホーム」の事故件数に関する聞き取り調査を行なった。
介護付き有料老人ホームは設置の際に所定の都道府県、その県の老人ホーム数が多い場合は、政令市または中核市のいずれかに届け出る。届け出を受理し、指導監督を施設に行なう全国112自治体が今回の調査対象だ。該当する老人ホームの施設数は3775施設(届け出が完了している2016年度時点)、定員数は45万7918人に上る。