日本を訪れる外国人が年々増えている。2020年「東京オリンピック・パラリンピック」の開催などであり、インバウンド訪日客4000万人時代が見えてきた。駐日大使154名の代表、マンリオ・カデロ駐日外交団長(駐日サンマリノ共和国特命全権大使)は、著書『世界が感動する日本の「当たり前」』(小学館新書)の中で、日本で「当たり前」なことが、世界の人々を魅了していると指摘する。以下、同書から一部引用する。
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いま、日本は世界の人々が一番訪れたい国です。「東京オリンピック」の開催があってもなくても、世界から日本を目指す外国人はますます増えていくでしょう。日本の精神性、文化、自然、神道などは、日本人の皆さんにとっては「当たり前」のことかも知れませんが、その「当たり前」なことに世界はとても魅了されているからです。
まず、日本はとても清潔で美しい国であることが、世界を魅了しています。私は来日した時、日本の温泉やお風呂の「当たり前」に驚きました。
言い方は良くないかもしれませんが、ヨーロッパでは昔から貧しい人が不潔であることは「当たり前」のことです。しかし、日本では裕福な人も貧しい人も毎日入浴して体を清潔にするのが「当たり前」でした。また、男女混浴も知りびっくりしました。
外交官の先輩、幕末に日本にやって来たタウンゼント・ハリス初代駐日アメリカ総領事も下田(静岡)の住民を観察して、「世界のあらゆる国で貧乏につきものになっている不潔なところが、少しも見られない」と、滞在記に記しています。
最近、幕末時代の日本人の多くが、「当たり前」のように毎日お風呂や温泉で体を清めていた理由がわかってきました。温泉や銭湯などの文化には神道の影響があるのだとわかったのです。神社に参拝する際、水で手を洗い、けがれをはらいます。日本人は禊(みそぎ=海や川の水で体を清めること)を普段は意識していませんが、心の中で大切にしていると思うのです。
キリスト教でも、入信の際の洗礼で浸水(体を水に浸す)などがあるので、ヨーロッパ人の私にとっても、神道の禊(みそぎ)は理解しやすいものです。神道を知ってから、浴槽にタオルを浸けてはいけないとか、体を洗ってからお風呂に入る日本の「当たり前」がより理解できるようになりました。
著書でも紹介しましたが、私は慶長遣欧使節団の支倉常長の研究も続けています。仙台藩主伊達政宗によりローマ教皇パウロ5世に謁見した常長。幸運なことに私は、数年前に、政宗や常長が入った秘湯の石風呂に入ることができました。
戦国時代に活躍した侍たちと同じ温泉に入ることができる日本。こんな素晴らしい場所が大切にされている日本。だから、世界の人たちが最も訪れたい国なのです。
※マンリオ・カデロ/著『世界が感動する日本の「当たり前」』(小学館新書)より