かつては一流投手の条件とも言われた「シーズン20勝」だが、分業制やローテーション制が確立されるにつれてその数は激減。平成以降の20勝投手はわずか7人だ。斎藤雅樹(2回達成)、西本聖、上原浩治、斉藤和巳、井川慶、岩隈久志、田中将大である。今シーズン、「平成最後の20勝投手」は誕生するのだろうか。
カミソリシュートで知られる元大洋のエース・平松政次氏は、入団4年目の昭和45年に25勝を挙げた。その年の先発登板は38試合、リリーフを含めて51登板の大車輪だったが、シニカルな見方なのが印象的だった。
「年間40~50試合も投げると、やっぱり体への負担は大きいからね。今は25試合くらい投げて、15~16勝を目指して長くやればいいんじゃないですか。それで年俸もたくさんもらえるわけですから。ただ、1週間に1回じゃ暇だろうね」
昭和の大投手たちと、平成のエースたちの違いの本質はどこにあるのだろうか。単純に登板数の違いというわけでもなさそうだ。通算400勝投手で、14年連続20勝の記録を持つ“カネやん”こと金田正一氏の答えはシンプルだった。
「昔の20勝投手はストレートに力があった。落ちる球では限界がある。今はコントロールばかり考え、打者に向かっていく集中力や闘争心がない。だから、ストレートで空振りが取れないんじゃ。肩の力を抜いて、下半身で投げられないと、20勝なんてできませんよ」
ファンは、闘争心あふれる20勝エースの姿を平成の世でも見たいと願っている。
※週刊ポスト2018年6月22日号