歴史的な会談から丸1日が経った。その舞台になったシンガポールでは、テレビで映らない場所で数々の混乱が起きていた。『シンガポールで見た日本の未来理想図』を上梓した、当地に駐在するファイナンシャル・プランナーの花輪陽子氏が、その実態をリポートする。
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トランプ大統領と金正恩委員長の会談が行われた前日の6月11日夜、私はちょうど日本に帰国するためにシンガポールの空港に向かっていました。アメリカと北朝鮮のトップが来るのですから、当然のことながら街も空港へ向かう道路もあちこち規制ばかり。驚くほど遠回りさせられました。
シンガポールでは、スマートフォンのアプリでタクシーを予約すると事前に料金が決まるためタクシー代が余計にかかるわけではないのですが、普段20~30分で行けるところ、この時は40分もかかりました。一緒に空港まで来てくれた夫は、空港からの帰りのタクシーでも、20分足止めを食らったそうです。金委員長がマリーナ・ベイ・サンズを観光したからです。
混乱はその日だけではありませんでした。確認した限り、金委員長が宿泊したセントレジスホテル周辺を中心に、3日ほど前から交通規制が始まっていました。おそらく爆発物が置かれていないかなどをチェックしていたのでしょう。
市内のあちこちで道路が封鎖されたり車線規制されたりしたおかげで、普段のような移動ができなくなってしまいました。シンガポールでは、中流の人々以上は車移動が中心となっているからです。地元の方は閉鎖される道路の情報をフェイスブックで共有していて、SNSでは「予定をキャンセルしなくちゃ」「どこそこには行けない」といった不満の声が飛び交っていました。
セントレジスホテル周辺には子供の習い事が集中しているのですが、我が家も友人もキャンセルせざるを得ない状況でした。我が家では数日間でバレエ、音楽、体操の習い事をキャンセルしましたが、バレエは振り替えができず、月謝で言うと5000円ほど損しました。