国内

繁殖させすぎた犬猫を有料で引き取り虐待する業者が暗躍中

栃木・矢板の通称『引き取り場』で。悪徳繁殖場は全国各地に潜んでいる(写真提供/公益社団法人日本動物福祉協会)

 今年3月、福井で犬猫約400匹を過密飼育した業者が、虐待容疑で刑事告発された事件をご記憶だろうか? こうした飼育方法は、決して一部業者が行っている特殊なケースなどではない。今まさにペットショップの店頭で販売されている犬猫の多くが、まるで“生産工場”のように、軽々しく作り出され、廃棄されているのだ。

 今必要なのは、店頭のガラス窓で愛らしく笑うペットの裏で、あまりに多くの命が犠牲になるというシステムの上に、日本のペット業界が成り立っている現実を知ること。そして、このシステムを根本から改善しようと声を上げることではないだろうか。ペットを取り巻く“現実”と“これから”を、今こそ考えてほしい。

 日本に1万3000軒超あるペットショップの店頭に並ぶ子犬や子猫は、工場のように大量生産する繁殖場(パピーミル)から、ペットオークションという競りを経て供給される。これが大半の飼い主がペットを手にするまでのルートだ。

 しかし、そもそも海外ではペットショップなど店頭での生体販売が一般的ではなく、子犬・子猫が生後56日(8週齢)以前に出荷されることも、欧米ではありえない。本来なら子犬たちに免疫力がつく8週齢まで親元に置くのが理想だ。

「今の日本では幼ければ幼いほど好まれ、高く売れる傾向があり、わずか生後49日で出荷されることがほとんど。免疫力のない子犬たちの多くは、途中で命を落としてしまいます。そのため、より多く繁殖させ、出荷する必要が出てきて、大量生産・大量消費に拍車がかかるのです」(『動物環境・福祉協会Eva』のスタッフ)

 また、免許不要で繁殖業が誰にでも始められてしまうのも、問題点の1つ。

「日本のパピーミルは庭先の小屋や民家で行われることが多く、まったくの素人が開業できてしまうのも特徴です。“必ず儲かるから”と持ちかけられて犬や猫を引き継ぐものの、実際には投資費用に比べて利益は少ないことの方が多い。そのため、負のスパイラルにはまっていく業者も多いのです」(『犬猫みなしご救援隊』のスタッフ)

◆処分したい犬猫を有料で引き取るビジネスが暗躍

 一方、売れ残って不良在庫となった犬はどうなるのか。実は「動物の愛護及び管理に関する法律」(以下、動物愛護法)の平成25年(2013年)の改正前まで、業者は売れ残った犬猫を自治体に持ち込み、そのほとんどが殺処分されていた。

 しかし、法改正後は、行政が犬猫の引き取りを拒否できるように。そうして行き場のなくなった、売れ残った犬猫の受け入れ先として存在感を増してきたのが、通称“引き取り屋”と呼ばれる過剰在庫処理業者だ。

「引き取りそれ自体は、違法ではありません。しかし、適切な世話をせずに衰弱させるなど虐待が疑われるケースは非常に多いのが実状です」(『日本動物福祉協会』のスタッフ)

 近年、2014年に発生した鬼怒川河川敷大量遺棄事件(栃木)など、引き取り屋が起こす問題が頻発している。

※女性セブン2018年6月28日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

大谷と真美子さんの「冬のホーム」が観光地化の危機
《ベイビーが誕生した大谷翔平・真美子さんの“癒しの場所”が…》ハワイの25億円リゾート別荘が早くも“観光地化”する危機
NEWSポストセブン
公然わいせつで摘発された大阪のストリップ「東洋ショー劇場」が営業再開(右・Instagramより)
《大阪万博・浄化作戦の裏で…》摘発されたストリップ「天満東洋ショー劇場」が“はいてないように見えるパンツ”で対策 地元は「ストリップは芸術。『劇場を守る会』結成」
NEWSポストセブン
なんだかんだ言って「透明感」がある女優たち
沢尻エリカ、安達祐実、鈴木保奈美、そして広末涼子…いろいろなことがあっても、なんだかんだ言って「透明感」がある女優たち
女性セブン
同僚に薬物を持ったとして元琉球放送アナウンサーの大坪彩織被告が逮捕された(時事通信フォト/HPより(現在は削除済み)
同僚アナに薬を盛った沖縄の大坪彩織元アナ(24)の“執念深い犯行” 地元メディア関係者が「“ちむひじるぅ(冷たい)”なん じゃないか」と呟いたワケ《傷害罪で起訴》
NEWSポストセブン
過去の大谷翔平のバッティングデータを分析(時事通信フォト)
《ホームランは出ているけど…》大谷翔平のバッティングデータから浮かび上がる不安要素 「打球速度の減速」は“長尺バット”の影響か
週刊ポスト
電動キックボードの違反を取り締まる警察官(時事通信フォト)
《電動キックボード普及でルール違反が横行》都内の路線バス運転手が”加害者となる恐怖”を告白「渋滞をすり抜け、”バスに当て逃げ”なんて日常的に起きている」
NEWSポストセブン
16日の早朝に処分保留で釈放された広末涼子
《逮捕に感謝の声も出る》広末涼子は看護師に“蹴り”などの暴力 いま医療現場で増えている「ペイハラ」の深刻実態「酒飲んで大暴れ」「治療費踏み倒し」も
NEWSポストセブン
初めて沖縄を訪問される愛子さま(2025年3月、神奈川・横浜市。撮影/JMPA)
【愛子さま、6月に初めての沖縄訪問】両陛下と宿泊を伴う公務での地方訪問は初 上皇ご夫妻が大事にされた“沖縄へ寄り添う姿勢”を令和に継承 
女性セブン
中村七之助の熱愛が発覚
《結婚願望ナシの中村七之助がゴールイン》ナンバーワン元芸妓との入籍を決断した背景に“実母の終活”
NEWSポストセブン
松永拓也さん、真菜さん、莉子ちゃん。家族3人が笑顔で過ごしていた日々は戻らない。
【七回忌インタビュー】池袋暴走事故遺族・松永拓也さん。「3人で住んでいた部屋を改装し一歩ずつ」事故から6年経った現在地
NEWSポストセブン
大阪・関西万博で天皇皇后両陛下を出迎えた女優の藤原紀香(2025年4月、大阪府・大阪市。撮影/JMPA)
《天皇皇后両陛下を出迎え》藤原紀香、万博での白ワイドパンツ&着物スタイルで見せた「梨園の妻」としての凜とした姿 
NEWSポストセブン
“極度の肥満”であるマイケル・タンジ死刑囚のが執行された(米フロリダ州矯正局HPより)
《肥満を理由に死刑執行停止を要求》「骨付き豚肉、ベーコン、アイス…」ついに執行されたマイケル・タンジ死刑囚の“最期の晩餐”と“今際のことば”【米国で進む執行】
NEWSポストセブン