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元マリノス・山田隆裕氏 メロンパン販売を経てバー経営者に

「サッカー界しか知らずに死んでいく人生は嫌だと思った」(撮影/渡辺利博)

「あのとき、俺が出てたら勝ってましたよ。誰よりも自分が上手いと思ってましたから」

 山田隆裕(46)は、静かに丁寧な口調で話す。「あの時」とは、1993年アメリカW杯アジア最終予選イラク戦。いわゆる“ドーハの悲劇”だ。山田はその前に代表を辞退していた。

「後半残り10分くらいでゴン(中山雅史)さんとの交代で武田(修宏)さんが出たけど、あのとき俺がメンバーにいて出ていれば……そう思っている人がいっぱいいると思いますよ(笑い)。でも、ドーハ組はバランスも良く一番強かった。

 あの頃、なんで俺が呼ばれるのか意味がわかんなかったです。試合には出してくれないしスタッフからの説明もない。お金が必要だったので最終予選を辞退したんです。……というのも当時のマリノスは代表に呼ばれると、その間は優遇措置もなく、試合を休んだ分だけマイナス査定だったんです。使ってもらえないし給料は減るから代表に行きたくない。呼ぶなよって感じでした」

 中学2年のとき父親が事業に失敗、1億近い借金ができた。父親は蒸発。母、姉、隆裕の3人は一時バラバラに暮らした。とにかく借金を返すため、山田は金を稼ぐことを第一とした。

「サッカーがお金を稼げる仕事だったというだけで、他に稼げる仕事があったらそっちにいってました。引退後も悠々自適に暮らせるほど報酬を貰っていたわけではなかったので、現役中から常に起業を考えてましたね。それで、たまたま大阪の知り合いがメロンパンの移動販売をやっていた。僕がフランチャイズ化したら一気に広がりました」

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