〈おひとりさまお断り〉──看板にそう書かれてはいないが、身寄りのない高齢者を「入所拒否」する特別養護老人ホームなどの介護施設がざっと3割にのぼることが厚労省の全国調査でわかった。
介護施設への入所申し込みには、緊急時の連絡先となる「身元保証人」が求められるケースがほとんどだ。保証人が用意できない場合、約31%の施設が拒否、成年後見制度の申請など条件付きで受け入れる施設が約34%あるが、成年後見は認知症など精神上の障害がある人しか申請できない。
頭はしっかりしているけれども、身体が不自由になってきて介護が必要という人は6割以上の施設から断られることになる。保証人なしでも無条件で受け入れる施設はわずか13%しかない。入所費用の支払いの心配がない人であっても同じだ。
だが、高齢者が動けなくなったとき、家族がいれば助けが呼べる。身寄りがいない高齢者にとって最後の「頼みの綱」が介護施設のはずだ。そのために年金から高額の介護保険料を天引きされているではないか。
カネだけ払わされて、いざ介護が必要になった時、おひとりさまは“門前払い”とは由々しき事態だろう。実は「入所拒否」は本当は認められていないはずなのだ。政府の社会保障審議会委員を務めた結城康博・淑徳大学総合福祉学部教授(社会保障論)が指摘する。