ビジネス

忙しい子供の中学受験経験から生まれた手帳の開発物語

金銭面の管理からゲン担ぎまでが一体となった受験手帳

 受験生の親というものは、受験生本人に負けないくらい、忙しい。勉強に専念するわが子を支えるために、健康管理から塾代や受験料のやりくりといった金銭面についても、計画的に進めたいところ。そんな受験生を抱える保護者目線で開発されたのが、『アナログママの中学高校受験スケジュール帳』(税抜き1,777円)だ。

 開発者の村上みゆきさんは、2人の子供の中学受験を経験した主婦。現在、息子は高校2年生、娘は中学3年生になったが、当時をこう振り返る。

「体調管理や塾の送迎、食事作りなどあらゆることに気を配りましたが、何より大変だったのがスケジュール管理でした。受験に関するすべてを1冊で管理できる手帳があれば、これから受験を控える保護者に役立つとひらめいたのです」(村上さん)

 2年前のこと、こうした手帳のアイディアを友人に話したところ、「面白そうだからやってみれば」と応援してくれるだけでなく、デザイン制作も買ってでてくれ、ほどなく仕上がった。だが、商品化する資金調達や販売方法、宣伝のためのホームページ作成など、わからないことが山積みだった。そこで、国が主催する「よろず支援拠点」へ足を運び、印刷やウエブサイト作りの専門家に何度も教えをこうた。

 販路をどう確保するかという課題もあった。出版物の多くは書店が返品できる条件で店頭に置かれる。『受験スケジュール帳』は、村上さんの自費出版。

「返品可」の条件ならばたくさんの書店に置いてもらえるが、負債のリスクを考えると、どうしてもその決断はできなかった。村上さんは、買い切りで商品を置いてもらえる書店やネット販売に注力することに決め、同時に認知度を上げるために奔走する。

 国の小規模事業者持続化補助金を活用し、新聞に広告を掲載したり、書店用のPOPと呼ばれる宣伝物を作製する。一方で、プレスリリース(商品紹介文)を作って、メディアに送り続けたのだ。

 これらが功を奏し、受験手帳はウエブニュースやテレビで取り上げられて認知度が上がると、徐々に売り上げも伸びていった。手にとってくれた人からは、「こういう手帳が欲しかった」「手にすると親も気合が入る」との声が届いた。受験を控える保護者の間には、潜在的需要があったのだ。

 このスケジュール帳には、村上さんの経験を通して必要と感じた項目が詰まっている。たとえば「年間の学費一覧」では、学校ごとの学費を比較でき、受験料から入学金の振り込みという、絶対に失敗できないスケジュールもひと目でわかる。

 想定していた母親だけでなく、受験生を抱える父親の購入者も3割を占めるという。実際に体験したからこそ生まれた実理性、そして、頑張るわが子を全力でサポートしたいという親の思いがギュッと詰まっていること──それが響いたのだろう。

※女性セブン2018年6月28日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

渡邊渚さんが性暴力問題について思いの丈を綴った(撮影/西條彰仁)
《渡邊渚さん独占手記》性暴力問題について思いの丈を綴る「被害者は永遠に救われることのない地獄を彷徨い続ける」
週刊ポスト
中居の女性トラブルで窮地に追いやられているフジテレビ(右・時事通信フォト)
《会社の暗部が暴露される…》フジテレビが恐れる処分された編成幹部B氏の“暴走” 「法廷での言葉」にも懸念
NEWSポストセブン
週刊ポストの名物企画でもあった「ONK座談会」2003年開催時のスリーショット(撮影/山崎力夫)
《追悼・長嶋茂雄さん》週刊ポストが1年前に託された最後のメッセージ「私の人生は野球に始まり、これからも常に野球とともにあります」
週刊ポスト
母・佳代さんと小室圭さん
《眞子さん出産》“一卵性母子”と呼ばれた小室圭さんの母・佳代さんが「初孫を抱く日」 知人は「ふたりは一定の距離を保って接している」
NEWSポストセブン
長嶋茂雄さんとの初対戦の思い出なども振り返る
江夏豊氏が語る長嶋茂雄さんへの思い 1975年オフに持ち上がった巨人へのトレード話に「“たられば”はないが、ミスターと同じチームで野球をやってみたかった」
週刊ポスト
元タクシー運転手の田中敏志容疑者が性的暴行などで逮捕された(右の写真はイメージです)
《泥酔女性客に睡眠薬飲ませ性的暴行か》警視庁逮捕の元タクシー運転手のドラレコに残っていた“明らかに不審な映像”、手口は「『気分が悪そうだね』と水と錠剤を飲ませた」
NEWSポストセブン
金田氏と長嶋氏
《追悼・長嶋茂雄さん》400勝投手・カネやんが明かしていた秘話「一緒に雀卓を囲んだが、あいつはルールを知らなかったんじゃないか…」「初対決は4連続三振じゃなくて5連続三振」
NEWSポストセブン
違法薬物を所持したとして不動産投資会社「レーサム」の創業者で元会長の田中剛容疑者と職業不詳・奥本美穂容疑者(32)が逮捕された(左・Instagramより)
《レーサム創業者が“薬物付け性パーティー”で逮捕》沈黙を破った奥本美穂容疑者が〈今世終了港区BBA〉〈留置所最高〉自虐ネタでインフルエンサー化
NEWSポストセブン
「秀才」に突然訪れた“異変”の原因とは(イメージ)
中受で超難関中高一貫校に入学した「秀才」に突然訪れた“異変”の原因とは「腹痛と下痢を繰り返し、成績は最下位クラス…」《エリートたちの発達障害》
NEWSポストセブン
《女子バレー解説席に“ロンドン五輪メダル組”の台頭》日の丸を背負った元エース・大林素子に押し寄せる世代交代の波、6年前から「二拠点生活」の現在
《女子バレー解説席に“ロンドン五輪メダル組”の台頭》日の丸を背負った元エース・大林素子に押し寄せる世代交代の波、6年前から「二拠点生活」の現在
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信)と妊娠中の真美子さん(大谷のInstagramより)
《大谷翔平が帰宅直後にSNS投稿》真美子さんが「ゆったりニットの部屋着」に込めた“こだわり”と、義母のサポートを受ける“三世代子育て”の居心地
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! ミスター長嶋茂雄は永久に!ほか
「週刊ポスト」本日発売! ミスター長嶋茂雄は永久に!ほか
NEWSポストセブン