国家資格を持つ歯科医師だから、“基本的に正しい治療を行なっている”と多くの人は信じているだろう。しかし、実際は、有効性が完全に否定された治療法や“全身のがん治療”を行なう歯科医までいる。発売即重版の話題書『やってはいけない歯科治療』著者のジャーナリスト・岩澤倫彦氏が混迷する歯科医療現場の摩訶不思議な実態をレポートする。
* * *
筆者は100人を超える歯科医や歯科衛生士を取材してきたが、不可解な場面に何度か遭遇した。関東のある歯科医院では、虫歯治療に使用するコンポジット・レジン(プラスチック系の材料)の種類を、「腕長反射テスト」なる不思議な方法を使って選んでいた。
まず、診察チェアに座った患者の胸元に、レジンを置く。そして伸ばした患者の両手を、歯科医が握って交差させる。
「このレジンは体に合っていないから、片方の腕が伸びなくて“ズレ”てしまいます。次に別のレジンに変えてみましょう。ほら、両腕がぴったり同じ長さで重なりますね。このレジンが体に合っているようです」
このように説明されたが、煙に巻かれた気分だった。患者役になった取材スタッフに聞いてみると──。