平日の放課後は、友達の家に集まってファミコン。土曜日のお昼、授業が終わるとお腹をすかせて家に帰る。テレビで松田聖子や西城秀樹が歌うのを見ながら母の作った昼食を食べる──小学生だったあのころに、少しだけ戻ってみませんか?
「誌面に載っているヘアアレンジを見て、“伊藤かずえ風ポニーテール”をやってみたのが、私の初めてのおしゃれだった」(40代女性)
「ハレー彗星の特集を読んで親に望遠鏡を買ってもらった」(40代男性)
子供のころ、『小学一年生』をはじめとした学年誌に掲載されたニュースや芸能、スポーツ、ファッションの情報に胸を躍らせた人は多いはず。そんな人たちに喝采をもって迎えられたのが『学年誌が伝えた子ども文化史 【昭和50~64年編】』(小学館)。大好評で重版となった前作(昭和40~49年編)に次ぐ2作目だ。
「当時の読者になつかしんで読んでもらうのはもちろん、小学生の目線に立って作った記事を集めているので、今の子供たちが読んでも楽しめる。さらにあのころ親だった祖父母世代にとっても思い出深い内容なので、3世代で読んでいるご家庭もあるようです」(同書の編集担当)
昭和50~64年にかけては、小学生を取り巻く環境が大きく変化した時代だった。教育評論家の石川幸夫さんが解説する。
「暗記による知識量の増大に重きを置く『詰め込み教育』に批判が集まり、授業の内容が変わり始めた時期でした。当時は1時間目から6時間目まできっちり授業があって、土曜日も午前中は学校。子供たちが学校にいちばん長くいた時期で、先生との距離が近かった。1クラスの人数も多かったので、教室に活気があった。電子ゲーム機の登場をきっかけに、子供たちの遊び場が屋外から室内へ切り替わった時代でもありました」(石川さん)
次々にアイドルが登場し、女の子たちはピンク・レディーの振り付けを覚えるのに夢中になり、聖子ちゃんカットに憧れた。エリマキトカゲやウーパールーパーなど変わった動物が流行するなど、振り返れば子供たちが夢中になれるものがたくさんあった。
まだネットもスマホもなかった時代、学年誌が子供たちの大事な情報源だった。
「学年誌がいちばん発行部数を伸ばしていた時期。小学生の7割は読んでいたのではないでしょうか」(石川さん)