6月9日、年間延べ3億人が利用する新幹線の中で発生した殺傷事件。小島一朗容疑者(22)は、1人を殺害し、2人を負傷させた。逃げ場のない“密室”、あるいは不特定多数の人物が利用する施設では、そうした“事件”が発生した際に咄嗟の判断と機転が生死を分ける。不測の事態に巻き込まれたとき何ができるのか。
危機管理コンサルタントの丸谷元人氏は、新幹線や地下鉄など乗り物における危機回避の鉄則として、「【1】逃げる、【2】隠れる、【3】戦う」の順序を崩さないことが重要だと指摘する。だが、この鉄則が当てはまらない乗り物もある。飛行機のハイジャックだ。
成田空港を飛び立った旅客機は安定した気流に乗り、シートベルト着用のサインも消えた。幼い子供は妻の膝に乗り、眼下に広がる太平洋の海原に見とれている。
その時、最悪の事態が起こった。ビジネスマンにしか見えなかったスーツ姿の男が乗客の一人にアイスピックを突きつけたのだ。鉄道と違い、逃げる別の車両もない。航空ジャーナリストの青木謙知氏が語る。
「命を守る観点からいえば、ハイジャックに際しては、目立つことなく、おとなしく座っているのが一番です。飛行機の客室は、最大でもワンフロアにつき50メートルほどしかありませんので、そもそも逃げることも隠れることもできない。
犯人を刺激すると、自分だけでなく、周囲の方々に危害が加えられる可能性も出てくるので、とにかくパニックを起こさないことが重要です」