6月9日、年間延べ3億人が利用する新幹線の中で発生した殺傷事件。小島一朗容疑者(22)は、1人の男性を殺害し、2人の女性にを負傷させた。逃げ場のない“密室”、あるいは不特定多数の人物が利用する施設では、そうした“事件”が発生した際に咄嗟の判断と機転が生死を分ける。不測の事態に巻き込まれたとき何ができるのか。
例えば、真っ暗な映画館の中で奇声が響き、バールを持った暴漢が逃げ惑う男女に襲いかかってきた場合、観客は唯一の出口に殺到し、将棋倒しになりかねない。
「映画館のホールは完全な密室ではありません。映像を投射する映写室のスタッフは、小窓やモニターでホールの中のお客さんたちの様子を見ているわけです。異変が生じた際は、すぐに警備員や施設スタッフを呼びに動けます」
そう打ち明けるのは、全国にシネコンを展開する大手映画会社の広報関係者だ。ホールの構造は、座席とスクリーンだけと、いたってシンプル。出入り口が塞がれると、客は逃げるに逃げられず、隠れる場所も見当たらない。
「じつは、隠れる場所はあります。そんな状況になったら、スクリーンの“裏”に入ってください。映画のスクリーンは壁に密着しているわけではなく、裏には、それなりに大きなスペースを挟んで、スピーカーが設置されていることが多いのです」
それほど長く身を潜めておく必要はない。ほどなく、映写室やロビーのスタッフが警備員を連れて、暴漢を取り押さえにくるという。