6月9日、年間延べ3億人が利用する新幹線の中で発生した小島一朗容疑者(22)による殺傷事件。逃げ場のない“密室”、あるいは不特定多数の人物が利用する施設では、そうした“事件”が発生した際に咄嗟の判断と機転が生死を分ける。不測の事態に巻き込まれたとき何ができるのか。
実は、乗り物には「その場所ならでは」の対策がある。例えば、時速50km前後で一般道路を走るバスでバスジャック事件が起きた場合はどうか。日本防災教育訓練センターのサニーカミヤ氏は、窓からの脱出は危険だという。
「ゆっくり動いているように感じられますが、飛び降りるには危険すぎます。おまけに、走るのは道路ですから、犯人の隙を見て窓から飛び出すとなると、タイミングを窺うのに精一杯で、対向車や後続の車両の有無までは確認できない」
関東のバス会社に勤めるベテラン乗務員も、“脱出”はむしろ命の危険が高まると語る。
「車内を注意深く見てもらえれば、多くのバス壁面に緊急脱出用のガラス破砕ハンマーが備え付けられていることに気づくと思いますが、あれは湖などに転落してしまったり、何らかの状況で通常のドアを開けられない場合に使うものです。“危険人物”がジャックした際に、自力で脱出を試みるのは控えていただきたい」
なぜ、乗務員は“自力での脱出”に否定的なのか。