ゆるやかな段差にフランス製の上質な桃色のソファシートが列をなす。照明の落とされた会場で人々は頬に映像の色を反射させる──。
東京・汐留の好立地のイベントスペースは公開前の映画試写会に人気の会場だ。映画館に引けを取らない大きなスクリーンに立体音響も備えた“本格派”。新聞、雑誌、テレビなどの映画担当記者、評論家がこぞって足を運ぶ試写会では170席ほどある客席がまばらなこともあれば、話題作は満席となることもある。
6月中旬、マスコミ向けに試写会が行われた映画『検察側の罪人』。8月24日公開予定で、木村拓哉(45才)と二宮和也(35才)の共演が話題の作品だ。
満席の試写会場を後にした映画評論家、愛好家の口からはこんな言葉がこぼれた。
「映画を見て久しぶりに鳥肌が立った」
「何を演じてもキムタク、というのは言われなくなるね」
「“まさか”の傑作。木村作品じゃなくて原田眞人監督作品を木村が演じきっている」
『検察側の罪人』は殺人事件の容疑者の1人を執拗に追い詰めていく木村演じるエリート検事・最上と、彼の捜査方針に疑問を持った二宮演じる駆け出しの検事が、「お互いの正義」をかけて対立していくストーリーだ。
木村の検事役といえば、ドラマ視聴率30%を突破し、映画でも大ヒットを記録した『HERO』が真っ先に思い浮かぶが、その影も感じなかったと言うのは映画評論家の宇野維正さんだ。
「検察組織に順応したふりをして、組織の中で出世しながら、実は正義とは真逆の方向に突っ走る役。『HERO』の久利生が“陽”なら今回の最上は“陰”。これまでキムタクが見せたことのないダークさを感じます。原田監督が木村さんや二宮さんをはじめ周囲に気を使わずやりたいことをやりきっている感じがすごい。その要求に2人とも応えているのも感銘を受けました」(宇野さん)
木村と二宮、それぞれの演技の見せ場も満載だという。
「とあるシーンでものすごい剣幕で怒りを爆発させる二宮さんに対して木村さんは怒りを秘めた深みのある演技。二宮さんが攻めならば木村さんが守り。両者の対決シーンも息をのむような緊迫感がありました」(宇野さん)
撮影現場で見せる木村の姿も、これまでとは違ったものだったという。
「木村さん主演映画ですが、二宮さんを立てて一歩引きながら気を使っていたように思います。いつもはモニターを一切見ないのですが、この映画では珍しくモニターを覗いていたのも印象的でした」(映画関係者)
試写会場から出てきた人に話を聞くと、「闇社会のブローカーを演じる松重豊(55才)と木村の絡みが凄かった」と言う人も多かった。公開まであと2か月だ。
※女性セブン2018年7月5日号