“認知症カフェ”をご存じだろうか。認知症の人とその家族が孤立しないよう、お茶を囲むカフェの雰囲気で交流し、専門家から知識を得たりできる場所。そして認知症とは無縁の人も気軽に参加し、認知症を身近に知ることができる。
近年、急増中の全国の認知症カフェを取材して、その魅力と意義を伝えている、カメラマン/ジャーナリストのコスガ聡一さんに聞いた。
◆今や日本は世界一の認知症カフェ大国
「認知症カフェは、認知症の人だけのための場所ではありません。むしろすべての人が、認知症の古いイメージを払拭し、認知症の“今”を知るための場所になることが大切な役割だと思っています」と言うコスガさん。実は彼も身内に認知症の人はおらず、“認知症と無縁の人”の1人だ。
「以前はぼくも、認知症の人は病院で寝たきり、人格も失われるようなイメージを持っていました。しかし、認知症医療の最前線の医師たちから現状を聞き、大きな衝撃を受けたのです。
今は医療やケアの技術が向上し、発症後の経過が昔に比べて格段によくなり、認知症と診断されても普通の生活が送れる人が増えている。それなのに社会から向けられる目は昔のイメージのまま。このギャップが解消されれば、認知症になっても生きやすくなる。認知症カフェは認知症と社会の架け橋のような役割も担っています」
現在、認知症カフェの数は日本全国で5000か所に迫る勢いだという。カフェが提供するサービスも多彩だ。
「大別すると、相談や情報交換、傾聴、医療・介護の識者による勉強会などを行う家族会系、みんなで体操や脳トレ、レクリエーションなどを行うミニデイサービス型、認知症であるか否かを問わず地域の多世代と交流できるコミュニティーカフェ型などがあります。これら細かい要素を独自に組み合わせて、各カフェがそれぞれの特色と雰囲気を持っています。
もともとは福祉先進国オランダで1997年に始まった“アルツハイマーカフェ”がモデルとなりましたが、このように豊かな発展を遂げたのは、日本の認知症カフェの特徴です」
カフェの参加者はもちろん、運営スタッフのボランティアなどとして、認知症でない地域住民もウエルカムだ。
「たくさんの人が入り交じり、隣で話していた人が認知症と気づいて驚いたり、自分と同じ立場の人と話して安心したり。楽しく過ごし、みんなの認知症の認識がアップデートされれば、大成功なのです」
◆1つのテーマを深く語り合い考える“カフェ”