会津若松駅からJR只見線で約90分。只見川流域の18か所に集落が点在する三島町は、冬は積雪が2mを超える豪雪地。古くから町のあちこちに桐が植えられ、春には一斉に薄紫の桐の花が咲き、夏の夕暮れ時には川霧が涼しさを運び、秋は山々の紅葉を楽しめるなど、まさに、四季折々の自然に恵まれた土地だ。
「この地域で育てられた桐は、会津桐と呼ばれ、江戸時代から嫁入りタンスなどによく用いられてきました」
桐工芸メーカー『会津桐タンス』の板橋充是さんはそう語る。
「会津の桐産業は約400年の歴史があり、初代藩主・保科正之の植林政策により始まったといわれています」(板橋さん・以下同)
桐は北海道から鹿児島まで、広く生息しているが、その風土により、材質は異なる。
「三島町の北部に流れる只見川は、尾瀬を源流としています。その流れにより運ばれた砂が堆積してできた土壌は、桐の育成に適しています。会津の桐はきめが細かくて、木目もハッキリしているので、見た目も美しい。
また、丈夫で軽いのも特長で、品質は日本一といわれています。現在、国内で流通している桐のうち国産は5%ほどですが、その生産量は会津桐が1位です」
桐のタンスや工芸品は高級品として知られるが、製品になるまでには、長い年月がかけられている。
「桐は秋から早春にかけて伐採したものを板状に製材し、シブ抜きのために日に干し、雨や雪にさらします。この作業を繰り返すことで、木が黒ずんだり、割れやすくなるのを防いでいます。これを、最低でも2~3年繰り返したあとで、ようやくタンスなどの製品づくりに入るのです」
桐の工芸品は、1つ買っておくと100年以上持つといわれるが、その耐久性は抜群だ。
「それに、桐にはセサミンやパウロニンという、防虫作用のある成分が含まれているので、大切なものを保管するのに、ぴったりなんですよ」
引き出しを開けると、ほんのりと漂ってくる上品な香りも、桐の大きな魅力の1つだ。
※女性セブン2018年7月5日号