カネをカネと思わないような行為がまかり通るところはやはり、バブルの象徴といえるのかもしれない。中国の情勢に詳しい拓殖大学海外事情研究所教授の富坂聰氏がレポートする。
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日本に旅行に来る中国人観光客たちの“爆買い”の話題は一段落といったところだが、彼らの消費パワーは相変わらず旺盛であるようだ。中央直轄市、重慶のメディア『重慶晨報』が5月24日付で報じた2つのニュースからは、その現実が良く伝わってくる。
その一つは〈とんでもない高価麵 ジャジャ麺一杯が1314元(約2万2000円) 入口で美女が生演奏〉という見出しの記事だ。
これは食材にこだわったが故の高価格ではなく、単に恋人向けのボックス席の席料を取られるという話だが、15日の前からの予約が必要で、実名制で身分証も必要というのには驚かされた。
一方、もう一つの記事は、〈彼女の誕生日に33万元(約550万円)の札束を使って、人民元の花束つくる 銀行は「違法」との見解を示す〉である。
これはどういうことかといえば、人民元の紅いお札を使い、折りたたんだりして花の形にした花束をつくり、大きなホールに敷き詰めたという話だ。日本の福沢諭吉さんでやれば茶色の花束になるということだ。
重慶市に住む33歳の男の発案だが、実行してそれをネットに上げたものだから、たちまち炎上したというわけだ。
この花束、その名も「有銭花」だというからあきれる。現場となったのは重慶江北城のホテルの61階。当日は、7人の技術者を雇い、10数時間をかけて花束を完成させたというから、大作である。
敷き詰めた人民元の花の中で笑う男の彼女の写真は、ちょっとした迫力がある。実際に使われたのは33万4400元だった。この罰当たりの行為に腹立たしい思いをしたのは、貧しい人たちばかりではない。メディアは早速、この行為に違法性を見出さそうと必死になった。
曰く、中華人民共和国中国人民銀行法第19条違反であり、同人民幣管理条例違反だというのだ。だが、いずれも微罪だ。
記事では最後に現場となったホテルの従業員のコメントが紹介されているのだが、それによると、「男は、レストランでの支払いは割り勘だった」というのだが、本当だろうか。