芸歴20年目を迎え、ますます円熟味を増す実力派女優・真木よう子。出演した公開中の映画『焼肉ドラゴン』(鄭義信監督)では、焼肉店を営む父を持つ在日韓国人三姉妹の長女を演じ、主演女優としての役割を果たしている。
「撮影は京都の太秦で1か月ほどかけて挑みました。キャストの皆様とはずっと一緒にいたので、撮影中はとても濃厚な時間でしたね。完成した作品を観た時は、なかなかないことなのですが、自分でも感動で涙してしまったくらいです。
撮影では、特に関西弁に苦労しました。関西出身の友人が多いので、“普段から耳にしてるから大丈夫かな”なんて高をくくっていたんですが、友人たちの多くは兵庫県出身だったので、コテコテの大阪弁とは微妙に違ったみたいで。方言指導の先生にしっかり直されてしまいました(笑い)。あとは在日韓国人の友人に“お互いの連帯感がすごく強い”という話を聞いたので、繋がりを強く意識して役作りをしていきました」
同作は大阪万博直前の昭和45年、伊丹空港近くの集落にあった小さな焼肉店が舞台。掘っ建て小屋が並ぶ空間で、焼肉店の家族と暑苦しいほどおせっかいな周囲の人間たちが、心を通わせ、本気でぶつかり合っていく。原作は2008年に日韓合同で製作された舞台劇で、「朝日舞台芸術賞グランプリ」「読売演劇大賞」など数々の著名な演劇賞を総ナメにした有名作だ。
真木が演じる長女・静花は、次女の梨花(井上真央)、三女の美花(桜庭ななみ)、末っ子の時生(大江晋平)とともに店を手伝う。両親は再婚同士で、家族の間には血縁関係があったり、なかったりという難しい役柄。右足に障害を抱えている静花は、足を引きずりながらも気丈に振る舞い、長女として家族を引っ張る立場にある。