7月の名古屋場所を前に発表された“新人事”は、日本相撲協会の古い体質が依然として変わらないことを示すものとなった。昨年末以降、相次いで発覚した力士による暴力事件や、八角理事長(元横綱・北勝海)と貴乃花親方による内紛劇があったことなどを考えれば、本来は信頼回復と刷新に躍起になりそうなものだが、角界の常識ではそうはならないようだ。
6月12日、相撲協会は最高議決機関である評議員会の議長に、池坊保子氏に代わって元NHK会長の海老沢勝二氏が就任することを発表した。
海老沢氏といえば、NHK会長時代に行なった独裁的な組織運営を「エビジョンイル」と揶揄されたイメージが強いが、角界にとっては“冬の時代”を支えた大功労者として位置づけられている。協会関係者が語る。
「海老沢氏は会長を退任した2007年から2009年まで横綱審議委員長を務め、2012年には協会の外部理事に就任、任期満了後の2016年から評議員になった。NHK会長経験者でもここまで協会に厚遇されるケースは稀。協会にとっては、2010年に野球賭博と八百長問題が相次いで発覚した時に、窮地を救ってくれたことの恩義が大きい。
2010年7月にNHKが史上初めて場所の中継を取り止め、“このまま相撲中継がなくなるかもしれない”といわれていた時に、海老沢氏が当時の幹部を説得して中継再開に漕ぎ着けたといわれている。1場所5億円、年間30億円ともいわれるNHKの払う放送権料は、協会の収益の柱ですから、果たした役割はとてつもなく大きい」