顔つきや身長など外見が遺伝することは常識だが、最近の研究では内面も遺伝の影響が大きいことがわかってきている。たとえば、知的な能力を示す「IQ(知能指数)」でいえば、およそ50%が遺伝の影響を受けるという。『日本人の9割が知らない遺伝の真実』(SB新書)の著者で、慶應義塾大教授の安藤寿康さん(行動遺伝学)はこう話す。
「残りの30%が家庭環境、20%が学校や友人など一人ひとりの独自の環境の影響を受けることが、研究で明らかになりました。ここでポイントは、『家庭』の割合が意外に大きいことです。
両親の与える遺伝と環境の影響だけでIQの80%が説明されます。つまり、教育熱心な家庭だったら、本人の努力とは別に、両親の影響だけでIQの高さがほぼ決まります。
しかも、『努力する性格』も、実は半分が遺伝の影響を占めます。要するに、“東大出身の親を持つ子供が東大に入る”可能性が高くなるのは必然なんです」(安藤さん)
◆安藤サクラ、佐藤浩市、ほか「演技の才能」も遺伝する?
三國連太郎さん(享年90)の長男・佐藤浩市(57才)や、奥田瑛二(68才)・安藤和津(70才)夫婦の次女・安藤サクラ(32才)など類い稀な才能を持つ2世役者もいる。
役者としての能力はさまざまで、一概にはいえないが、役柄や物語の世界観を理解するための「論理的な推論能力」は68%が遺伝する。舞台の上で自分がどう働いているかを把握するための「空間認識」は70%。台詞を言う時には「音程を取る能力」も必要そうだが、それは80%が遺伝で決まるとされている。
上手い役者になる能力も、大きな部分で遺伝に影響されるといえそうだ。
一方で、台詞を覚える「記憶の能力」への遺伝の影響は約56%なので、努力で充分にカバーできる範囲なのだろう。
ミュージシャンの“親子鷹”も少なくない。藤圭子さん(享年62)と宇多田ヒカル(35才)、森進一(70才)・森昌子(59才)夫婦と「ONE OK ROCK」ボーカルのTAKA(30才)も、その一例だが、彼らの才能も遺伝しているのか。
「音程」能力は80%が遺伝。作曲能力など複雑な「音楽」の才能は、実に92%が遺伝によるという。2014年には「リズム感覚を司る遺伝子」も発見されている。
遺伝子的には「俳優」よりも「ミュージシャン」のほうが2世が成功する可能性が高そうだ。ちなみに、小説家などの「執筆」の能力は83%、「美術」の能力は56%が遺伝によるという。
※女性セブン2018年7月12日号