ライフ

認知症の女性、暑さと寒さがわからず冷房設定を16℃に

高齢になると温度やのどの渇きに気づきにくくなる

 認知症の母親(83才)の介護をしている女性セブンのN記者(54才・女性)が、熱中症予防が重要課題となる夏の介護についてレポートする。

 * * *
 母は認知症ながら、まだまだ季節の変化を楽しんでいる。夏到来!というような強い日差しの日には、鮮やかなビタミンカラーやマリンボーダーのTシャツを選び、さらにお出掛けには長袖のブラウスを羽織り、顔が半分くらい隠れるサングラスに完全遮光の日傘という完璧ないでたちだ。

「年取ったら日差しがキツいのよね。肌がヒリヒリするしまぶしいの。サングラス、目がすごく楽なのよ」と言う。

 若い頃におしゃれで買ったものを後生大事にとっておいたのだろう。昭和の雰囲気ムンムンのデザインで、しわの増えた母には昆虫の複眼みたいで、少々おもしろ怖い。

 もちろん紫外線対策も大事だが、高齢者にとって最大の脅威は熱中症だ。夏になると自宅にいた高齢者が熱中症で救急搬送されるニュースをよく耳にするが「なぜ安全な自宅で?」という疑問は、母を見ていると実によくわかる。

 母の住むサ高住の部屋は、大きな道路に面しているので夏でもガラス戸は閉め切りだが、紫外線カットのレースカーテンをかけ、最新式のエアコンもついている。

 ところが、母はエアコンをつけないのだ。気温が上昇する日中に訪ねると、部屋はかげろうが立ち上りそうな熱気で、私は一気に汗が噴き出すが、母は汗ばんでもいない。

「Nちゃんたら若いのね~」

 そう言ってのんきに笑う母。

「ここサウナじゃない! 死んじゃうよ!」と大げさにまくしたててエアコンをつける。

 そうか! リモコンが使えないのかもしれない。テレビをつけないのも電話の子機を使わないのも、リモコン風の機械が苦手だからに違いない。

 寒すぎないように冷房を28℃に設定し、ボタン1つでオン・オフができるようにした。

「これがママの命綱だよ」と脅かし、ヘルパーさんには時々室温を確認してもらうようにお願いもした。

 数日後、再び母を訪ねると、部屋は「南極か!」というほど極寒地になっていた。慌ててエアコンのリモコンを見ると、設定はなんと16℃! 母なりに使いこなそうといじったのだろう。ブルッと身震いする私を笑う母を見て、初めて気づいた。暑くても寒くても、わからないのだ。

◆のどの渇きもわかりにくい。「水分補給」警報発令中

 熱中症対策の基本は脱水状態にならないよう水分補給を欠かさないこと。私自身も暑い日には、行く先々でお茶や水を飲む。私たち中年でも意識して水分補給しないと、体が麻痺する事態になるという。

 母と出掛けるときも、こまめに休憩して水分を摂るが、ここでも問題がある。母は尿もれ用パッドなどを使っていないので、外出先での水分補給には非常に神経質だ。これは多くの高齢者も同じらしい。

 とはいえ熱中症は命にもかかわる。熱中症がいかに怖いかを切々と説いてお茶に誘う。木陰に腰かけ、自販機の冷たいお茶に口をつけると、「おいしい~。生き返るわ」。

 飲んで初めてのどの渇きに気づく。やはり、あらゆることに鈍感になっている。だがここで悲観しても仕方ない。

「ね、やっぱり暑い中で飲む冷たいお茶は最高でしょ!」

 一緒にお茶を飲み干した。

※女性セブン2018年7月12日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

真美子さんと大谷(AP/アフロ、日刊スポーツ/アフロ)
《大谷翔平が見せる妻への気遣い》妊娠中の真美子さんが「ロングスカート」「ゆったりパンツ」を封印して取り入れた“新ファッション”
NEWSポストセブン
19年ぶりに春のセンバツを優勝した横浜高校
【スーパー中学生たちの「スカウト合戦」最前線】今春センバツを制した横浜と出場を逃した大阪桐蔭の差はどこにあったのか
週刊ポスト
「複数の刺し傷があった」被害者の手柄さんの中学時代の卒業アルバムと、手柄さんが見つかった自宅マンション
「ダンスをやっていて活発な人気者」「男の子にも好かれていたんじゃないかな」手柄玲奈さん(15)刺殺で同級生が涙の証言【さいたま市・女子高生刺殺】
NEWSポストセブン
ファンから心配の声が相次ぐジャスティン・ビーバー(dpa/時事通信フォト)
《ハイ状態では…?》ジャスティン・ビーバー(31)が投稿した家を燃やすアニメ動画で騒然、激変ビジュアルや相次ぐ“奇行”に心配する声続出
NEWSポストセブン
NHK朝の連続テレビ小説「あんぱん」で初の朝ドラ出演を果たしたソニン(時事通信フォト)
《朝ドラ初出演のソニン(42)》「毎日涙と鼻血が…」裸エプロンCDジャケットと陵辱される女子高生役を経て再ブレイクを果たした“並々ならぬプロ意識”と“ハチキン根性”
NEWSポストセブン
山口組も大谷のプレーに関心を寄せているようだ(司組長の写真は時事通信)
〈山口組が大谷翔平を「日本人の誇り」と称賛〉機関紙で見せた司忍組長の「銀色着物姿」 83歳のお祝いに届いた大量の胡蝶蘭
NEWSポストセブン
20年ぶりの万博で”桜”のリンクコーデを披露された天皇皇后両陛下(2025年4月、大阪府・大阪市。撮影/JMPA) 
皇后雅子さまが大阪・関西万博の開幕日にご登場 20年ぶりの万博で見せられた晴れやかな笑顔と”桜”のリンクコーデ
NEWSポストセブン
朝ドラ『あんぱん』に出演中の竹野内豊
【朝ドラ『あんぱん』でも好演】時代に合わせてアップデートする竹野内豊、癒しと信頼を感じさせ、好感度も信頼度もバツグン
女性セブン
中居正広氏の兄が複雑な胸の内を明かした
《実兄が夜空の下で独白》騒動後に中居正広氏が送った“2言だけのメール文面”と、性暴力が認定された弟への“揺るぎない信頼”「趣味が合うんだよね、ヤンキーに憧れた世代だから」
NEWSポストセブン
高校時代の広末涼子。歌手デビューした年に紅白出場(1997年撮影)
《事故直前にヒロスエでーす》広末涼子さんに見られた“奇行”にフィフィが感じる「当時の“芸能界”という異常な環境」「世間から要請されたプレッシャー」
NEWSポストセブン
天皇皇后両陛下は秋篠宮ご夫妻とともに会場内を視察された(2025年4月、大阪府・大阪市。撮影/JMPA) 
《藤原紀香が出迎え》皇后雅子さま、大阪・関西万博をご視察 “アクティブ”イメージのブルーグレーのパンツススーツ姿 
NEWSポストセブン
2024年末に第一子妊娠を発表した真美子さんと大谷
《大谷翔平の遠征中に…》目撃された真美子さん「ゆったり服」「愛犬とポルシェでお出かけ」近況 有力視される産院の「超豪華サービス」
NEWSポストセブン