そこで筧さんが死亡する前月に結婚したばかりの千佐子に捜査の手が及ぶと、彼女が過去に結婚や交際をした高齢の男性が、次々と死亡していたことが判明。被害者の住所は大阪府や兵庫県、奈良県と近畿一円にまたがり、その数は筧さんを含めて11人に上った。
捜査の結果、残された血液や胃の内容物から青酸化合物が検出された京都府と大阪府の各1人と、死亡時に残された診療記録などから、青酸中毒死と判断された兵庫県の2人への犯行に関わったとして、千佐子は逮捕・起訴されたのである。被害者はいずれも70代だ。
◆「愚女ですが、よろしゅう」
私は昨年6月から京都地裁で始まった裁判員裁判を、可能な限り傍聴してきた。そこでは傍聴前に疑問に感じていた、千佐子がなぜ数多くの高齢男性を籠絡できたのか、頷ける情報も詳らかにされた。
たとえば千佐子が結婚前に筧さんに送っていたメールは、以下のようなものだ。
〈おはよう。昨日はありがとう。勇夫さんの愛と信頼に、あなたのもとにいく気持ち、揺るぎないものになりました。私のような愚女を選んでもらいありがとう。これからは二人で幸せを見いだしていきましょう。愚女ですが、よろしゅうにお願いします〉
このほかにも〈会えば会うほどあなたのことが好きになります〉といった言葉も使われており、妻との離婚や死別などで孤独な老後を送る高齢の男性が、年下の女性から送られて“胸躍る”文面を、彼女が多用していたことが窺える。