まず、郊外の新築ファミリーマンションを購入するのは「第一次需要層」と呼ばれている人々。年齢は30代中盤以上。結婚をしていて就学前のお子さんがいる。
「この子が小学校に入る前にマイホームを」
そういう需要が第一次需要層の典型的なケースであった。ところが、現在の35歳から40歳台の前半にかけては、いわゆる「ロスジェネ世代」がすっぽりと当てはまる。
ロスジェネ世代とは、平成の大バブルが弾けた後で山一證券や北海道拓殖銀行が追い込まれ、日本中に不況感が蔓延していた時期と大学の卒業が重なった世代。厳しい就職活動を強いられた挙げ句、正社員として社会人をスタートできない人も多かったようだ。
先日、内閣府が調査したところ、正社員の2015~2017年の平均給与を年齢層別に5年前(2010~2012年)と比べたところ、40代だけが減少していたと発表した。統計にも、この世代の苦難な状況が鮮明に表れている。
一方、リーマンショック前に大量供給された大規模マンションを買い支えた需要層は、現在40代後半から50台の前半に差し掛かっている。彼らは日本がバブル的な好景気を享受した時期に大学を卒業。就職活動もバブル的な売り手市場だった。彼らは一般に「バブル採用組」と呼ばれたりもする。
この「バブル採用組」はいわゆる「団塊ジュニア」世代の先頭集団であり、需要層の分母となる年齢別の人口も多かった。各年代とも、常に180万人以上をキープ。
団塊ジュニアのピークで年齢別人口が最大となるのは1973年生まれで約202万人。彼らが就職活動を始めた時期は、すでに就職氷河期に入りつつあった。明解に就職率などの数字が悪化したのは1997年以降だろう。だから、ロスジェネ世代の中核は現在37歳から43歳まで。まさに現時点での「第一次需要層」なのだ。
たまさか就職活動を行っていた時期、日本は未曽有の不況であった……ロスジェネ世代の不幸は、決して彼ら自身の責任に帰せられるものではない。ただただ、不運だった。
そんな彼らがマンション購入の適齢期を迎えたことで、市場はその変化の波を受けている。
また、郊外エリアでは中古マンションの価格低迷が鮮明になってきている。新築マンションが販売されている同じエリア内で、築20年の中古が半額で買える、というような現象も当たり前になってきた。
社会人の入口で大きな苦難を経験したロスジェネ世代の消費行動は手堅い。「バブル採用組」のように、未来を楽観できない世代なのだ。
「ロスジェネ世代」は狭く見ると1975年生まれかから1981年生まれの7年。しかし広く見ると1971年から1983年生まれまでの13年間となる。
また、リーマンショック後の不況感が強い時期に就職活動を強いられた1988年生まれから1990年生まれの人々も「第二のロスジェネ」と見るべきではなかろうか。そのボリュームは決して侮れないし、幅広い産業における今後の主要な需要層は彼らだ。
そう考えると、新築マンション市場も含めた日本経済の行方には、楽観を許さないものがある。
●文/榊淳司(住宅ジャーナリスト)