インターネットの普及で、性別や年代を問わず、世界中の人々とつながれるようになった。しかし、それは同時に新たな危険と隣り合わせになる可能性を生んでいる。SNS事情に詳しいネットニュース編集者の中川淳一郎さんが解説する。
「ネットで誰とでもつながれるようになった時、ぼくたちは性善説で見知らぬ他人と接しようとしたんです。でも実際には、人間不信が深まるような事件ばかり起きている。そもそも渋谷のキャッチは怪しいから無視するのに、ネットだと見知らぬ人の誘いに気軽に応じるのがおかしいんです。ネットの中では、人は性悪説に立つべきかもしれません」(中川さん)
ネットやSNSで自分を発信して活動することが命取りとなることもある。2016年5月には、音楽活動をしていた女子大生の冨田真由さん(当時20才)のブログやツイッターにあてて、執拗な書き込みをしていた岩崎友宏被告(当時28才)が冨田さんをナイフで刺して重傷を負わせた。
今年6月には、「Hagex」のハンドルネームで活動していた東京都の岡本顕一郎さん(享年41)が、福岡市の無職・松本英光容疑者(42才)に福岡市内で刺殺される事件が起きた。
松本容疑者はネットコミュニティーで他の利用者を「低能」などと頻繁に中傷し、中でも岡本さんへの攻撃を執拗に繰り返していたとされる。今回の犯行は、岡本さんがネットコミュニティーの運営会社に通報し、その後別のユーザーも通報したことで松本容疑者のアカウント凍結に繋がったことを逆恨みしたものとみられている。もはや現代は発信することそのものがリスクになる時代なのだ。
「SNSでは、無茶苦茶な意見でも賛同してくれる仲間が見つかる半面、まったく関係のない人からいきなり激しい攻撃を食らうこともあります。ページビューを稼ぎたい芸能人やブロガーは別にして、一般人がSNSに手を染めると、思わぬ炎上で仕事を失ったり、最悪の場合は、身に危険が及ぶ可能性もあります。今や、一般人にはマイナス面の方が大きいツールになっているのかもしれません」(中川さん)
今後、私たちはどのようにSNSとつきあえばいいのか。中川さんが言う。
「現在はSNSでつながった友達が多いことが幸せとされるが、一方でもう人間関係を増やしても意味がないという人も増えていると感じる。これから先は、SNSを一切見ない人の方が勝ち組になるのかもしれません。それでもSNSを利用するなら、知らない他人に何かを期待するのではなく、ネット上の人間関係はマイナスからスタートすると意識して、いいところがあれば少しずつ加点していくべきだと思います」
※女性セブン2018年7月19・26日号