作画を兄が、文章とストーリーを妹が担当する兄妹ユニット「おぷうのきょうだい」さんが描いた漫画『俺、つしま』。2017年、彗星の如くツイッターに登場後、愛猫家を中心にたちまち話題に。
4月26日に本が書店に並ぶやいなや、全国で売り切れが相次いだ。重版を重ねて、現在は発売2か月でなんと10万部を突破している。『婚活食堂』を発売した松本清張賞受賞の作家・山口恵以子さんも作品に魅了されている一人だ。
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物心ついた頃からわが家には猫がいて、今も2匹の猫と暮らしています。
そんな私から見れば、つしまとおじいちゃんはお互いに依存し合っている素敵な関係。つしまがセミを持ってくるのは、おじいちゃんへの尊敬と愛情の証ですよ。何より、豆腐の角に頭をぶつけたおじいちゃんの夢を見るつしまに、ご主人への愛を感じます。
一方で、作品の根底には明日への不安や、別れの寂しさが漂っています。つしまの最初のご主人は高齢者だったのですが、突然に亡くなりました。
猫は、飼い主に先立たれたら、今ほどは気楽に暮らせないと思うんですね。優しい飼い主に出会えればいいけれど、先住の猫がいたら肩身が狭いでしょう。私だったら、猫より先には死ねません。かといって、猫を看取るのもつらい。
ただ、救われるのは、姐さんの最期、「なんにも心配すんな」「おらたちゃずっといっしょだ」と会話を交わす場面。私がかつて愛猫を看取った時、猫が言葉を話せていたらこう言ってくれていたんじゃないかなと思うと、つらい気持ちも薄れてくるんです。
猫がいると、正直大変ですよ。便座の上に乗ってトイレ中を水浸しにされたこともあります。でも、母91才、兄71才、私60才の高齢家庭にとっては、猫でもいないと笑いが生まれない。どんなにひどいいたずらをされても、猫がいない生活は考えられません。
だからこそ、最初のご主人が亡くなる前、「うちにきてくれてありがとうな、つしまさん」と言う場面は、身につまされます。私には家族がいますが、つしまの前の飼い主はひとり暮らし。
晩年つしまがいてくれた幸せは計り知れなかったと思いますね。
※女性セブン2018年7月19・26日号