ライフ

『婚活食堂』山口恵以子氏が語る『俺、つしま』の魅力

松本清張賞作家も魅了される『俺、つしま』の一コマ

 作画を兄が、文章とストーリーを妹が担当する兄妹ユニット「おぷうのきょうだい」さんが描いた漫画『俺、つしま』。2017年、彗星の如くツイッターに登場後、愛猫家を中心にたちまち話題に。

 4月26日に本が書店に並ぶやいなや、全国で売り切れが相次いだ。重版を重ねて、現在は発売2か月でなんと10万部を突破している。『婚活食堂』を発売した松本清張賞受賞の作家・山口恵以子さんも作品に魅了されている一人だ。

 * * *
 物心ついた頃からわが家には猫がいて、今も2匹の猫と暮らしています。

 そんな私から見れば、つしまとおじいちゃんはお互いに依存し合っている素敵な関係。つしまがセミを持ってくるのは、おじいちゃんへの尊敬と愛情の証ですよ。何より、豆腐の角に頭をぶつけたおじいちゃんの夢を見るつしまに、ご主人への愛を感じます。

 一方で、作品の根底には明日への不安や、別れの寂しさが漂っています。つしまの最初のご主人は高齢者だったのですが、突然に亡くなりました。

 猫は、飼い主に先立たれたら、今ほどは気楽に暮らせないと思うんですね。優しい飼い主に出会えればいいけれど、先住の猫がいたら肩身が狭いでしょう。私だったら、猫より先には死ねません。かといって、猫を看取るのもつらい。

 ただ、救われるのは、姐さんの最期、「なんにも心配すんな」「おらたちゃずっといっしょだ」と会話を交わす場面。私がかつて愛猫を看取った時、猫が言葉を話せていたらこう言ってくれていたんじゃないかなと思うと、つらい気持ちも薄れてくるんです。

 猫がいると、正直大変ですよ。便座の上に乗ってトイレ中を水浸しにされたこともあります。でも、母91才、兄71才、私60才の高齢家庭にとっては、猫でもいないと笑いが生まれない。どんなにひどいいたずらをされても、猫がいない生活は考えられません。

 だからこそ、最初のご主人が亡くなる前、「うちにきてくれてありがとうな、つしまさん」と言う場面は、身につまされます。私には家族がいますが、つしまの前の飼い主はひとり暮らし。

 晩年つしまがいてくれた幸せは計り知れなかったと思いますね。

※女性セブン2018年7月19・26日号

関連記事

トピックス

現在はアメリカで生活する元皇族の小室眞子さん(時事通信フォト)
《ゆったりすぎコートで話題》小室眞子さんに「マタニティコーデ?」との声 アメリカでの出産事情と“かかるお金”、そして“産後ケア”は…
NEWSポストセブン
逮捕された元琉球放送アナウンサーの大坪彩織被告(過去の公式サイトより)
「同僚に薬物混入」で逮捕・起訴された琉球放送の元女性アナウンサー、公式ブログで綴っていた“ポエム”の内容
週刊ポスト
まさに土俵際(写真/JMPA)
「退職報道」の裏で元・白鵬を悩ませる資金繰り難 タニマチは離れ、日本橋の一等地150坪も塩漬け状態で「固定資産税と金利を払い続けることに」
週刊ポスト
精力的な音楽活動を続けているASKA(時事通信フォト)
ASKAが10年ぶりにNHK「世界的音楽番組」に出演決定 局内では“慎重論”も、制作は「紅白目玉」としてオファー
NEWSポストセブン
2022年、公安部時代の増田美希子氏。(共同)
「警察庁で目を惹く華やかな “えんじ色ワンピ”で執務」増田美希子警視長(47)の知人らが証言する“本当の評判”と“高校時代ハイスペの萌芽”《福井県警本部長に内定》
NEWSポストセブン
ショーンK氏
《信頼関係があったメディアにも全部手のひらを返されて》ショーンKとの一問一答「もっとメディアに出たいと思ったことは一度もない」「僕はサンドバック状態ですから」
NEWSポストセブン
悠仁さまが大学内で撮影された写真や動画が“中国版インスタ”に多数投稿されている事態に(撮影/JMPA)
筑波大学に進学された悠仁さま、構内で撮影された写真や動画が“中国版インスタ”に多数投稿「皇室制度の根幹を揺るがす事態に発展しかねない」の指摘も
女性セブン
奈良公園と観光客が戯れる様子を投稿したショート動画が物議に(TikTokより、現在は削除ずみ)
《シカに目がいかない》奈良公園で女性観光客がしゃがむ姿などをアップ…投稿内容に物議「露出系とは違う」「無断公開では」
NEWSポストセブン
長女が誕生した大谷と真美子さん(アフロ)
《大谷翔平に長女が誕生》真美子さん「出産目前」に1人で訪れた場所 「ゆったり服」で大谷の白ポルシェに乗って
NEWSポストセブン
『続・続・最後から二番目の恋』でW主演を務める中井貴一と小泉今日子
なぜ11年ぶり続編『続・続・最後から二番目の恋』は好発進できたのか 小泉今日子と中井貴一、月9ドラマ30年ぶりW主演の“因縁と信頼” 
NEWSポストセブン
第一子出産に向け準備を進める真美子さん
【ベビー誕生の大谷翔平・真美子さんに大きな試練】出産後のドジャースは遠征だらけ「真美子さんが孤独を感じ、すれ違いになる懸念」指摘する声
女性セブン
同僚に薬物を持ったとして元琉球放送アナウンサーの大坪彩織被告が逮捕された(時事通信フォト/HPより(現在は削除済み)
同僚アナに薬を盛った沖縄の大坪彩織元アナ(24)の“執念深い犯行” 地元メディア関係者が「“ちむひじるぅ(冷たい)”なん じゃないか」と呟いたワケ《傷害罪で起訴》
NEWSポストセブン