ビジネス

ハイレゾ音質のラジカセがヒット、おじさんニーズに合致

おじさんのニーズをガッチリ掴んだハイレゾ・ラジカセ『Aurex TY-AK1』

 音楽はスマートフォンで楽しむ時代になったが、30年ほど前まで、その主役はラジカセだった。

 好きな曲をラジオやレコードからカセットテープに録音し、自分で編集した1本には、青春時代の思い出が詰まっている。そして、再生するラジカセ本体がない今も、これらのカセットテープを大事に押し入れの奥で眠らせている中高年は少なくない。

 そんな隠れたニーズに応えるべく、最近また、ラジカセが発売されるようになった。なかでも人気なのが、今年3月に発売された『Aurex TY-AK1』(実勢価格2万3000円前後)だ。

『TY-AK1』は、カセットテープやCD、ラジオの音源を“ハイレゾ(ハイレゾリューションオーディオ)”相当の音質で再現して聴けるオーディオ機器。

 現在、私たちがよく耳にしているCDやMP3の音源は、原音からデジタル化するときに、音の一部が省かれている。ハイレゾとは、CDを上回る情報量で原音に限りなく近い高解像度の音質と、人間には聞こえない40kHzまでの高音を再生する技術のこと。聞こえないはずの高音が加わることで、音に奥行きが出て、高音質な音楽を楽しむことができるのだ。

 開発のきっかけは、2年前。ハイレゾCDラジオ『TY-AH1000』を発売したところ、「カセットテープもハイレゾレベルの音で聴きたい」という要望が多数寄せられたことだった。

 しかし、カセットテープというアナログ音源をハイレゾ相当の音質にするという機能は、この商品が世界初。納得のいく音作りに、約1年を費やした。

 それに、現在発売されているラジカセの売れ筋の価格帯は5000円前後。2万円を超える価格で販売するのは、冒険でもあった。いざ、ふたを開けてみると、多くのメディアで取り上げられ、『Aurex TY-AK1』は一気に話題となった。

 初めて目にした若者にはクールに映ったこともあったようだが、当て込んでいた50~60代男性へのニーズは大当たり。わずか1か月で、目標販売台数の2000台をクリアした。

 実は、このラジカセを企画した渡辺利治さん(58才)の青春時代も、まさにカセットテープの全盛期。

「企画も開発も責任者もすべておじさん。おじさんが担当した商品を世のおじさんに向けて発売してみたら響いた、ということですね(笑い)」(渡辺さん)

『TY-AK1』を取り扱っている店舗では、原田知世の曲を収録したデモ用カセットテープを配り、その場ですぐ試聴できるように仕掛けた。そして店頭で耳を傾けたおじさんを、一瞬にして青春時代に引き戻してしまった、ということのようだ。

※女性セブン2018年7月19・26日号

関連キーワード

トピックス

打撃が絶好調すぎる大谷翔平(時事通信フォト)
大谷翔平“打撃が絶好調すぎ”で浮上する「二刀流どうするか問題」 投手復活による打撃への影響に懸念“二刀流&ホームラン王”達成には7月半ばまでの活躍が重要
週刊ポスト
懸命のリハビリを続けていた長嶋茂雄さん(撮影/太田真三)
長嶋茂雄さんが病に倒れるたびに関係が変わった「長嶋家」の長き闘い 喪主を務めた次女・三奈さんは献身的な看護を続けてきた
週刊ポスト
6月9日、ご成婚記念日を迎えた天皇陛下と雅子さま(JMPA)
【6月9日はご成婚記念日】天皇陛下と雅子さま「32年の変わらぬ愛」公務でもプライベートでも“隣同士”、おふたりの軌跡を振り返る
女性セブン
(インスタグラムより)
「6時間で583人の男性と関係を持つ」企画…直後に入院した海外の20代女性インフルエンサー、莫大な収入と引き換えに不調を抱えながらも新たなチャレンジに意欲
NEWSポストセブン
中国・エリート医師の乱倫行為は世界中のメディアが驚愕した(HPより、右の写真は現在削除済み)
《“度を超えた不倫”で中国共産党除名》同棲、妊娠、中絶…超エリート医師の妻が暴露した乱倫行為「感情がコントロールできず、麻酔をかけた患者を40分放置」
NEWSポストセブン
第75代横綱・大の里(写真/共同通信社)
大の里の強さをレジェンド名横綱たちと比較 恵まれた体格に加えて「北の湖の前進力+貴乃花の下半身」…前例にない“最強横綱”への道
週刊ポスト
地上波ドラマに本格復帰する女優・のん(時事通信フォト)
《『あまちゃん』から12年》TBS、NHK連続出演で“女優・のん”がついに地上波ドラマ本格復帰へ さらに高まる待望論と唯一の懸念 
NEWSポストセブン
『マモ』の愛称で知られる声優・宮野真守。「劇団ひまわり」が6月8日、退団を伝えた(本人SNSより)
《誕生日に発表》俳優・宮野真守が30年以上在籍の「劇団ひまわり」を退団、運営が契約満了伝える
NEWSポストセブン
清原和博氏は長嶋さんの逝去の翌日、都内のビル街にいた
《長嶋茂雄さん逝去》短パン・サンダル姿、ふくらはぎには…清原和博が翌日に見せた「寂しさを湛えた表情」 “肉体改造”などの批判を庇ったミスターからの「激励の言葉」
NEWSポストセブン
貴乃花は“令和の新横綱”大の里をどう見ているのか(撮影/五十嵐美弥)
「まだまだ伸びしろがある」…平成の大横綱・貴乃花が“令和の新横綱”大の里を語る 「簡単に引いてしまう欠点」への見解、綱を張ることの“怖さ”とどう向き合うか
週刊ポスト
インタビュー中にアクシデントが発生した大谷翔平(写真/Getty Images)
《大谷翔平の上半身裸動画騒動》ロッカールームでのインタビューに映り込みリポーター大慌て 徹底して「服を脱がない」ブランディングへの強いこだわり 
女性セブン
映画『八日目の蝉』(2011)にて、新人俳優賞を受賞した渡邉このみさん
《ランドセルに画びょうが…》天才子役と呼ばれた渡邊このみ(18)が苦悩した“現実”と“非現実”の境界線 「サンタさんを信じている年齢なのに」
NEWSポストセブン