訪日外国人が急増しているが、なかでも沖縄を訪れる中国人観光客の存在感は際立っている。中国人観光客向けの沖縄バスツアーに潜入したフリーライターの西谷格氏が、彼らの観光の好みから、中国にとって沖縄はどのような存在なのかを探った。
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沖縄県が発表した「平成29年(暦年)沖縄県入域観光客統計概況」によると、昨年沖縄を訪れた外国人は254万人で、うち中国人が20%を占める。別の調査では、沖縄旅行で使う一人当たりの消費額は台湾人や韓国人が約8万円なのに対し、中国人は約14万円と突出。沖縄経済における中国人観光客の存在感は圧倒的だ。
ツアーに参加するにあたり、中国の旅行サイトを見て気づいたのは、訪問先に第二次大戦に関する土地がまったくないことだ。「ひめゆりの塔」「平和祈念公園」といった戦跡は一切まわらず、ダイビングなどのマリンスポーツ、あるいは風光明媚な景勝地、そして免税店やアウトレットモールなどを回るコースが一般的。せっかく沖縄に来たのだから「平和学習」もおすすめしたいが、中国人はとかく日本の「被害者としての歴史」を嫌う。戦前の日本を絶対悪として教育されている彼らにとって、沖縄の戦跡は心理的に相容れないのだろう。
バスは那覇から乗車。断崖絶壁に広がる草原の上から、真っ青な海を望むことのできる景勝地・万座毛を訪れた後、古宇利島、美ら海水族館、アメリカンビレッジをめぐり、那覇市内に戻って解散した。古宇利島はバスで行ける離れ小島で、アメリカンビレッジは雑貨店や飲食店などが立ち並ぶ商業施設。途中で立ち寄ったカフェでは、ガイドは「ここに置かれている大きな塊は、すべて珊瑚なんですよ!」と説明しており、参加者は感嘆の声を漏らしていた。
だが、どうも怪しいと感じてカフェのスタッフに問いただしたところ、「あれはただの岩です」と言われた。いい加減なものである。