忖度はどの世界にもある。問題はその程度だ。中国の情勢に詳しい拓殖大学海外事情研究所教授の富坂聰氏がレポートする。
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為人民服務(人民のために奉仕せよ)──。中国の街を歩いていると、よく目にするスローガンだ。一般に権力側にいる者たちを戒める言葉だが、往々にして実態がそうなっていないことを示している。
だが、怒涛の勢いで反腐敗キャンペーンをやった習近平政権の下では、「民高官低」の空気が社会の隅々にまで広がっていたはずである。お役人の天国と呼ばれる中国の現実は、それでもいまだにしっかり根を張ったままであったということなのだろうか。そんなことを思わせるニュースを報じたのは、『北京青年報』が運営するサイト、『北青網』(6月10日)である。
記事のタイトルは、〈結婚式の途中で新郎新婦が式場から追い出される ホテルが市の道路局の会議を優先〉である。見出しを読めば、だいたい何が起きたのかが想像できるだろう。
場所は青海省西寧市。高級ホテルの式場を半年前から予約していた馬さんは、あるとき「役所の会議を式の後ろに入れますが、式には一切影響しませんから」という連絡を受けた。だが当日、会議の時間が近づくと食事が途中であるにもかかわらず、ホテル側はさっさと片づけに入ってしまい、ステージも撤去してしまったという。宴会場の周りには役人たちが集まり式の雰囲気をぶち壊しになり、一生の晴れ舞台は無残なものとなってしまった。
記事を読めば、ホテル側が後ろの役人に気を使って新郎新婦をぞんざいに扱ったことがよくわかるのだが、はやり言葉で言えば「忖度」したということだ。それにしてもなぜ道路局の役人たちが高級ホテルで会議をしなければならないのか。これこそ贅沢禁止令違反に引っかかるケースではないのか。