国内

殺人事件の引き金にもなる「地域密着型掲示板」の危うさ

ローカルな話題を赤裸々に語るだけの掲示板のはずが

 ネット掲示板をきっかけとして起きた殺人ときくと、2007年に起きた「闇サイト殺人事件」のように、非合法な情報を交換するために存在した闇サイトで犯行グループは結成されたと考える。ところが、5月末に遺体が見つかり、6月に容疑者たちが逮捕された浜松看護師殺人事件では、ごく普通の地域密着型掲示板によって容疑者たちは結びついていた。ライターの森鷹久氏が、普通の掲示板経由で殺人事件が起きたことで広がる衝撃についてレポートする。

 * * *
 静岡県浜松市で、看護師の女性が連れ去られ、遺体で見つかった事件。20代と40代の男性2人が逮捕され、主犯格の男性は、その後、新潟県内で死亡が確認された。自殺とみられている。かつて世間を震撼させた「闇サイト殺人事件」が再び起きたか、と各マスコミが報じたが、事実が明らかになってくるにつれ、被疑者三人が犯行に至るまでの極めてカジュアルないきさつに、取材していた記者らは唖然とした。

「被疑者らは”地域密着型掲示板”と呼ばれるサイト上で接触をしていたようですが、いわゆる”闇サイト”ではなく、誰でも気軽に見たり投稿ができる掲示板でした。都道府県、市町村ごとに掲示板が分かれていて、書き込みは下劣なものが目立ちますが、まさかこんな卑劣な事件が起こるとは想像もしていませんでした」

 事件を取材した週刊誌記者がこう語るように、被疑者ら三人は「地域密着型掲示板」を接点として犯行に及んでいた。そこは、誰でもアクセスできる、開かれた”普通”の掲示板だ。ただしそこは、ネット掲示板で一番有名な「5ちゃんねる」のような、日本中、世界中の人が大きなニュースや世界的なネタに反応し書き込むものではない。

 きわめて限定された空間、例えば同じ市内や町内で起きたことをネタにするなど、仕組みとしては世界中から見られるネットの開かれた場所でありながら、耳目を引くトピックスはいずれもローカル色の濃さが際立っているのだ。まさに街角の掲示板、壁の落書き、といった様相だが、利用者は少なくない。口コミで”面白いサイトがある”と酒場や主婦の間でも話題になり、国内有数のアクセス数を誇るサイトでもある。

 ただし、あまりにローカル色が強いためか「××町に住む○○○は貞操観念が低い」「居酒屋××店の店員○ね」などといった、特定の人物を攻撃したり貶めることが目的の、ひどいスレッドや書き込みが目立つ。ネットは様々な人の知識や経験を集積した「集合知」を実現させやすく、それによって様々な利点があると言われてきた。ところが、簡単に人が集えるがゆえに、常識的には考えられないほど道徳意識が低い人々も参加してしまっていることでも、この「地域密着型掲示板」は知られていたという。

 また、類は友を呼ぶとでもいうべきなのか、悪口や誹謗中傷だけに限らない。主人不在の部屋がさらに汚れていくかのように、薬物の売買を匂わせたり、違法風俗店についての情報交換の書き込み、援助交際相手の募集、児童ポルノサイトの情報共有など、一応はだれでもアクセスできるパブリックスペースのはずなのに、ありとあらゆる違法行為、犯罪行為が行われていることをうかがわせる書き込みがゾロゾロ出てくるのだ。

「余りの程度の低さに、掲示板にアクセスしているのは地方に住む中高生とか、若者だけだと思っていました。ところが、よくよく見ていると違うんですね。町内会の嫌われ者の名前を実名で晒したり、特定の会社の社長や役員名を出した殺害予告があったり、薬物売買、売春……挙げればキリがない。一番よくないのは、サイト側がこうした書き込みを放置しているということ。通報があれば書き込みやスレッドを消してはいるのですが、削除すべき内容の分量に、現実の削除が追い付いていない」

関連キーワード

関連記事

トピックス

田中圭と15歳年下の永野芽郁が“手つなぎ&お泊まり”報道がSNSで大きな話題に
《不倫報道・2人の距離感》永野芽郁、田中圭は「寝癖がヒドい」…語っていた意味深長な“毎朝のやりとり” 初共演時の親密さに再び注目集まる
NEWSポストセブン
春の園遊会に参加された天皇皇后両陛下(2025年4月、東京・港区。撮影/JMPA)
《春の園遊会ファッション》皇后雅子さま、選択率高めのイエロー系の着物をワントーンで着こなし落ち着いた雰囲気に 
NEWSポストセブン
現在はアメリカで生活する元皇族の小室眞子さん(時事通信フォト)
《ゆったりすぎコートで話題》小室眞子さんに「マタニティコーデ?」との声 アメリカでの出産事情と“かかるお金”、そして“産後ケア”は…
NEWSポストセブン
週刊ポストに初登場した古畑奈和
【インタビュー】朝ドラ女優・古畑奈和が魅せた“大人すぎるグラビア”の舞台裏「きゅうりは生でいっちゃいます」
NEWSポストセブン
逮捕された元琉球放送アナウンサーの大坪彩織被告(過去の公式サイトより)
「同僚に薬物混入」で逮捕・起訴された琉球放送の元女性アナウンサー、公式ブログで綴っていた“ポエム”の内容
週刊ポスト
まさに土俵際(写真/JMPA)
「退職報道」の裏で元・白鵬を悩ませる資金繰り難 タニマチは離れ、日本橋の一等地150坪も塩漬け状態で「固定資産税と金利を払い続けることに」
週刊ポスト
2022年、公安部時代の増田美希子氏。(共同)
「警察庁で目を惹く華やかな “えんじ色ワンピ”で執務」増田美希子警視長(47)の知人らが証言する“本当の評判”と“高校時代ハイスペの萌芽”《福井県警本部長に内定》
NEWSポストセブン
ショーンK氏
《信頼関係があったメディアにも全部手のひらを返されて》ショーンKとの一問一答「もっとメディアに出たいと思ったことは一度もない」「僕はサンドバック状態ですから」
NEWSポストセブン
悠仁さまが大学内で撮影された写真や動画が“中国版インスタ”に多数投稿されている事態に(撮影/JMPA)
筑波大学に進学された悠仁さま、構内で撮影された写真や動画が“中国版インスタ”に多数投稿「皇室制度の根幹を揺るがす事態に発展しかねない」の指摘も
女性セブン
奈良公園と観光客が戯れる様子を投稿したショート動画が物議に(TikTokより、現在は削除ずみ)
《シカに目がいかない》奈良公園で女性観光客がしゃがむ姿などをアップ…投稿内容に物議「露出系とは違う」「無断公開では」
NEWSポストセブン
長女が誕生した大谷と真美子さん(アフロ)
《大谷翔平に長女が誕生》真美子さん「出産目前」に1人で訪れた場所 「ゆったり服」で大谷の白ポルシェに乗って
NEWSポストセブン
『続・続・最後から二番目の恋』でW主演を務める中井貴一と小泉今日子
なぜ11年ぶり続編『続・続・最後から二番目の恋』は好発進できたのか 小泉今日子と中井貴一、月9ドラマ30年ぶりW主演の“因縁と信頼” 
NEWSポストセブン