「空き家問題」が深刻さを増す日本の不動産市場。人口減少に歯止めがかからないのに新築住宅は次々と着工されているのだから、空き家が増えるのも当然だ。そんな中、木造の古い輸入住宅が一部の投資家から注目を浴びているという。一体なぜなのか。住宅ジャーナリストの榊淳司氏がレポートする。
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先日、とある有力なデベロッパーの仕入れ担当者と電話で雑談をした。市況のこと、土地の価格動向、建築費が高止まりしている等々、話題は尽きない。
最後に彼がこういった。
「当社では最近アメリカの木造住宅を国内の投資家に販売しているのですが、これがすごくよく売れるのですよ」
「木造住宅……もしかして築22年以上の物件?」
「そうです。よくご存じで。ものすごく売れすぎているので、そのうち国税庁に目を付けられそうですけどね」
なぜ、築22年以上の木造住宅が投資家に好まれるのか──。その理由は、この国ならではの税法上の仕組みにある。
不動産を購入して賃貸運用などで利益を出した場合、日本では建物の価値は年々減じていくという考えに立ち、その減少分を経費として計上できることになっている。いわゆる「減価償却」という経費項目だ。
鉄筋コンクリートなら46年、木造住宅なら22年が税法上の耐用年数。だから新築の木造住宅に投資した場合、その建物部分についての購入額を22年かけて経費として計上していく。しかし、これはあくまでも新築の場合である。
築22年の木造住宅を購入して賃貸で収益を上げた場合はどうなるのか。この場合は、建物の使用価値が低いと見なされ、4年で減価償却出来ることになっている。
アメリカの木造一戸建て住宅の価格は、大半が建物の価値だと評価される。1億円の邸宅を買った場合は、8千万分が建物ということが普通。ということは、購入から4年間は毎年2000万円を減価償却費として経費計上できる。
その邸宅の利回りが10%だとすると、減価償却費だけで1000万円も赤字が出せる。その他に保険料や修繕費、業者への委託費なども経費計上できるから、場合によっては1500万円くらいの「赤字」が出る。この赤字を国内で上げたその他の不動産などの収益と合算すれば、利益を圧縮できる。その結果税金も安くなる、という仕組みだ。
これが国内で築22年の木造住宅を購入した場合はどうなるのか。同じ1億円の物件でも、日本では土地が8000万円、建物が2000万円、というケースがほとんどだろう。そうすると4年での償却対象は毎年500万円。あまり節税効果がない。