阪神、南海、広島などで活躍した野球解説者の江夏豊氏は、「本は野球のボールと同じ」と語るほどの“本好き”だ。その江夏氏が、「我が人生の書棚」を語った。
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昭和53年の広島時代、「野球のことを考えると寝付けない」と知り合いの人に言ったら、「じゃあ、本でも読めば」と渡してくれたのが松本清張氏の『点と線』と『眼の壁』。それが面白くて、以来本を読むことが好きになりました。今も枕元に本とタバコがないと眠れないタイプで、どんなに疲れていても夜眠る前に布団の中で寝転んで本を開き、2、3ページでも読みます。読むのは文庫本の小説がほとんどで、月に数冊から10冊程度ですかね。
僕の本の読み方は作家主義と言うのか、気に入った作品と出合うと、その作家の本をすべて読み、場合によっては同じ作品を何回も繰り返し読むんです。
最初にはまった作家が司馬遼太郎さんで、なかでも大好きなのが『燃えよ剣』。幕末維新の動乱の時代を、最後まで自分の意志を貫いて生きた新選組の土方歳三に、勝負の世界に生きていた自分を重ね合わせて読みました。司馬さんの描く土方は自分にとって生きる指針です。
連作短編の『新選組血風録』も好きです。『坂の上の雲』などは何回も読みましたが、唯一読んでいないのは『街道をゆく』。これはもう少し歳を取ったときにじっくり読もうと、あえて今は読まずにいるんです。司馬さんが歩いた街道を、できれば自分も歩いてみたいですね。