平成も終わりに差しかかり「添い遂げる」という価値観が少しずつ変わってきている。そもそも「結婚」が定まったのは、明治期に戸籍制度が導入されてから。以降、女性は結婚して夫の家に嫁ぐことが当たり前とされた。
社会学者の水無田気流さんが戦後の結婚観の変遷を解説する。
「日本の戦後社会では、1950年代半ばから1970年代半ばまでの高度成長期には、誰もが結婚することを前提とした『皆婚社会』が到来しました。“家と家の結びつき”という旧来の結婚観は徐々に減退し、1960年代半ば以降は、お見合い結婚を恋愛結婚が上回るようになりました。そして概ね1980年代半ばまでは、右肩上がりの経済のなかで、地縁・血縁・職場縁が男女の結びつきを後押ししていました」
結婚しない人に「なんで結婚しないの?」と聞くことが普通だった時代。「離婚」や「デキ婚」はまだまだ珍しかった。
だが1990年代にバブルが崩壊し経済不安になると、「夫が一家の大黒柱」という結婚モデルが大きく傾く。女性の社会進出が進むと、結婚観はさらに多様化した。
結婚したまま互いに干渉しない生活を送る「卒婚」や、夫の死後に一緒のお墓に入りたくない人による「死後離婚」などが登場。2016年には契約結婚をテーマとしたドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)が大ヒットした。
『「逃げ恥」にみる結婚の経済学』(毎日新聞出版)の共著者でジャーナリストの白河桃子さんが指摘する。
「恋愛から結婚を経て出産し、子育てを終えて夫と老後を暮らすという“添い遂げ結婚”は昭和期のモデルです。現在は生涯未婚を選ぶ女性も確実に増加しており、結婚観がどんどん変化しています」
「人間が自分の価値観を形成するにあたって影響を受けた相手を、社会学で『準拠集団』と呼びます。これは生まれ育った家族集団など実際に属するものもあれば、ドラマや小説で描かれる理想像までさまざまです。“結婚観”はこの準拠集団の影響が強く、一世代前の価値観に拘泥しがちです。多くの人々は不満がありながらも既存の『結婚パッケージ』を死守しようとするため、非婚出産など新しい結婚観への風当たりが強くなります。それでも“呪い”として表れる昔ながらの価値観に打ち負かされず、自分が幸せになれると信じる道を進んでいくことが大切です」
現在の結婚にとって最後の障壁は「親」である、と白河さんが指摘する。
「新しいスタイルの結婚を実践する人々が最もカミングアウトできないのが親です。今は結婚自体が難しい時代だから、バツイチだろうが連れ子がいようが、自分の子供に結婚相手が現れたことをラッキーだととらえるべき。親の世代も、子供の幸せのために昭和型家族像の幻想を振り払う必要があります」
※女性セブン2018年7月19・26日号