食の安全への意識改革が進む中国だが、“落差”もまた大きいのが現実である。現地の情勢に詳しい拓殖大学海外事情研究所教授の富坂聰氏が指摘する。
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中国で“外売”といえば、いまやケータリングの代名詞だ。北京や上海の街角では、配達の三輪車を見かけることが多い。
食品安全問題で苦しんできた中国だが、都会の一部では、ケータリングを申し込む前に、その店の厨房の様子をカメラで確認できるというサービスを提供している店も増えてきている。
日本のメディアのなかには、いまだに中国の食品といえば「危険」というステレオタイプな報道も見かけるが、高級スーパーでは、タグにスマホをかざすだけで、検査データから流通の経路、はたまた生産地の現在の様子を動画で確認できるサービスまであるのだから、日本が上から目線でものを言う時代ではなくなりつつある。
だが、そんな時代になっても解決されない問題はある。それが衛生の問題である。
安全な食を手に入れようとすれば、高級スーパーに行けば日本以上のものが手に入る中国だが、常に高級品ばかりを手にすることはできない。それはケータリングも外食も同じである。
というわけで心配な衛生面からの中国の食の問題である。こちらは、やはりいまだになかなか厄介な問題を抱えている、といえそうだ。
まず、6月に『新京報』が報じたニュースでタイトルは、〈大学生が注文したケータリングの弁当のネズミ 尻尾を囓っても昆布だと思い気付かず〉である。
場所は湖南省。大学生は直ちに食品安全の110番である「12345」に通報。間もなく同店には食品薬品監督管理局の調査が入った。大学生には、ケータリングのプラットフォームから賠償金約1000元(約1万7000円)が支払われる予定だというが、決して気分が晴れることはないだろう。
そしてもう一つは、やはり6月に『南国都市報』が報じたニュースで、タイトルは〈火鍋を食べ、1時間でゴキブリが8匹も出てきた クレームを受けた店主は、「オレにも分からんと回答〉である。
これは鍋を食べ続けて、一匹、また一匹とゴキブリが出てきたという話ではなく、一匹を見つけた時点で箸を止め、なべ底をさらったら更に7匹出てきたという話だ。
驚いたのは海口市のそのレストランは賠償も、ただにもせず、しかたなく被害者は「12345」に訴えたという。ちなみに鍋を食べた被害者は女性だそうだ。