子供を連れ去り、わいせつ行為をする“犯人”は、怪しげな見た目などしていないことの方が多い。それどころか、こぎれいな身なりをし、きちんと働き、結婚して子供を持っている者さえいるという──。そこで、実際に我が子を連れ去られそうになった女性の体験談を紹介する。
「狐につままれたような気分、とはまさにこのことです」と話してくれたのは、42才の主婦・Sさん。
「あれは4年前、息子が5才の時のことです。日曜日の昼過ぎ、私たち家族3人は、東京郊外にある公園に来ていました。息子は私たち夫婦の4~5m前を走ったりスキップしたりしており、私たちはその様子を見ながら、談笑していました。その時です。50代くらいの小柄な男性が左から息子に近寄り、手をつなぐと、私たちから見て右方向へ歩いて行ったんです」
その男は、ワイシャツに黒いパンツとこぎれいな身なりで、マスクもサングラスもしていなかった。
「息子は抵抗することもなく、素直に男について行きます。まわりから見たら、祖父が孫の手をつないで歩いているような自然さです。私は一瞬、何が起きたかわかりませんでした。夫から、“あの人知り合い?”と尋ねられ、われに返りました。私も同じ質問を夫にしようとしていたからです。私たち夫婦は、“ちょっと、すいません!”と叫び、慌てて男を追いかけました。男は逃げるわけでもなく、私たちが追いつく前に息子を離すと、何事もなかったかのように去って行きました」
男を追いかけられなかったのは、息子を迷子と間違えた、親切な人だという可能性もぬぐえなかったからだ。というのも、男は悪びれる様子も、焦る様子もない。それまで思い込んでいた“不審者像”とは、かけ離れていた。
「親の目の前で、堂々と子供を連れ去る、なんてありえますか? でも、念のために近くの交番に話をしに行くと、同じ公園で何件か、同様の報告を受けているとわかり、背筋が凍りました」
安全生活アドバイザーの佐伯幸子さんは、こういうケースは驚くことではないという。
「親が一緒にいても油断できません。不審者は、親がスマホの操作のために目を離すといった一瞬のスキを狙っています。1分あれば連れ去られ、5分もあれば車に乗せられて、走っても追いかけられない距離まで連れて行かれます。親は子供に何かあったらすぐ動ける距離で見ていてほしいのです」(佐伯さん)
※女性セブン2018年8月2日号