ライフ

高齢になって衰える咀嚼や嚥下 調理の工夫でカバーが可能

玉ねぎは横に包丁を入れて繊維を断ち切る(イラスト/オモチャ)

 高齢になって噛む力(咀嚼)や飲み込む力(嚥下)が衰えても、調理の仕方で食べやすくできる。高齢者の食生活にも詳しい管理栄養士の成田美紀さんはこう語る。

「まず問題になるのは野菜や肉の繊維。これが噛み切れないのが食べにくさにつながります。野菜やかたまり肉は、繊維を断つように切ることが基本です。アスパラガスやかぼちゃ、トマト、パプリカなどは硬い皮をむいて調理すると、とても食べやすくなります」

◆食べやすくする工夫

 繊維に対して直角、または斜めに包丁を入れ、繊維を短く切ることで食べやすくなる。薄切り肉やつなぎでまとめたひき肉が食べやすいが、かたまり肉なら繊維をカット。主な食材を食べやすくする工夫は、以下の通り。

 キャベツは葉脈に沿うように繊維がある。繊維を断つようにせん切りにするとやわらかな食感に。

 にんじんやごぼうなどは、斜めに輪切りにしてから細切りにすると繊維が断たれてやわらかく食べられる。

 ピーマンは縦方向に繊維があるので、横に包丁を入れるとやわらかくなる。

 玉ねぎは横に包丁を入れると繊維が断ち切れ、加熱したときに甘みも出やすい。

 脂身と赤身の境目に包丁の先端を刺して、繊維を断つ。赤身の中の脂身(サシ)にも軽く包丁を入れてから加熱すると、やわらかくなって食べやすい。

 かたまりの肉はそぎ切りにすると、より繊維が切れる。

 また唾液の分泌が減り、口の中でまとめにくくなるので、水分多めもポイントだ。

「食材がやわらかくなるまで煮込んだ煮物、汁が食材によく絡んだあんかけ料理もおすすめです。生野菜を塩もみにしてしっとりさせたり、茹でた葉野菜にはマヨネーズやみそなど、とろみのある調味料や食材と和えたりすると、食べやすくなります」

 さらに嚥下機能が衰え始めると、サラサラした水分が飲みにくくなるという。

「のどの奥の器官の反応が鈍くなり、飲み込んだものが気管に入り込みやすく(誤嚥)、むせたりせき込んだりします。汁ものなどは、とろみをつけるとのどをゆっくり通過するので誤嚥しにくくなります」

◆缶詰やレトルト食品も常備して食べる支援を

 最近、レンジ加熱ですぐ食べられるパックご飯を買う高齢者が増えているという。

「当研究所の調査でも、献立を考えたり調理したりすることが面倒だという人がとても多いです。それでも何とかバランスのよい食事が続けられるように缶詰、レトルト食品、冷凍食品や、市販の総菜などを上手に使うのも1つの方法です。

 調理済のものなら、手間なく肉や魚などの動物性たんぱく質が摂れますし、単調な食事に栄養素がプラスできます。普段、自分が作らない料理の味も刺激的です。ただし市販の加工食品は塩分や油分が多めなので、他の食材や野菜を混ぜて味を薄めるなどのアレンジを」

 市販品を敬遠する高齢者もいるが、そこは家族が上手にすすめたい。あの手この手で食べ続けることが大切だ。

※女性セブン2018年8月2日号

関連キーワード

トピックス

11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(右/読者提供)
【足立区11人死傷】「ドーンという音で3メートル吹き飛んだ」“ブレーキ痕なき事故”の生々しい目撃談、28歳被害女性は「とても、とても親切な人だった」と同居人語る
NEWSポストセブン
愛子さま(写真/共同通信社)
《中国とASEAN諸国との関係に楔を打つ第一歩》愛子さま、初の海外公務「ラオス訪問」に秘められていた外交戦略
週刊ポスト
グラビア界の「きれいなお姉さん」として確固たる地位を固めた斉藤里奈
「グラビアに抵抗あり」でも初挑戦で「現場の熱量に驚愕」 元ミスマガ・斉藤里奈が努力でつかんだ「声のお仕事」
NEWSポストセブン
「アスレジャー」の服装でディズニーワールドを訪れた女性が物議に(時事通信フォト、TikTokより)
《米・ディズニーではトラブルに》公共の場で“タイトなレギンス”を普段使いする女性に賛否…“なぜ局部の形が丸見えな服を着るのか” 米セレブを中心にトレンド化する「アスレジャー」とは
NEWSポストセブン
日本体育大学は2026年正月2日・3日に78年連続78回目の箱根駅伝を走る(写真は2025年正月の復路ゴール。撮影/黒石あみ<小学館>)
箱根駅伝「78年連続」本戦出場を決めた日体大の“黄金期”を支えた名ランナー「大塚正美伝説」〈1〉「ちくしょう」と思った8区の区間記録は15年間破られなかった
週刊ポスト
「高市答弁」に関する大新聞の報じ方に疑問の声が噴出(時事通信フォト)
《消された「認定なら武力行使も」の文字》朝日新聞が高市首相答弁報道を“しれっと修正”疑惑 日中問題の火種になっても訂正記事を出さない姿勢に疑問噴出
週刊ポスト
地元コーヒーイベントで伊東市前市長・田久保真紀氏は何をしていたのか(時事通信フォト)
《シークレットゲストとして登場》伊東市前市長・田久保真紀氏、市長選出馬表明直後に地元コーヒーイベントで「田久保まきオリジナルブレンド」を“手売り”の思惑
週刊ポスト
ラオスへの公式訪問を終えた愛子さま(2025年11月、ラオス。撮影/横田紋子)
《愛子さまがラオスを訪問》熱心なご準備の成果が発揮された、国家主席への“とっさの回答” 自然体で飾らぬ姿は現地の人々の感動を呼んだ 
女性セブン
26日午後、香港の高層集合住宅で火災が発生した(時事通信フォト)
《日本のタワマンは大丈夫か?》香港・高層マンション大規模火災で80人超が死亡、住民からあがっていた「タバコの不始末」懸念する声【日本での発生リスクを専門家が解説】
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「金の無心をする時にのみ連絡」「断ると腕にしがみついて…」山上徹也被告の妹が証言した“母へのリアルな感情”と“家庭への絶望”【安倍元首相銃撃事件・公判】
NEWSポストセブン
被害者の女性と”関係のもつれ”があったのか...
《赤坂ライブハウス殺人未遂》「長男としてのプレッシャーもあったのかも」陸上自衛官・大津陽一郎容疑者の “恵まれた生育環境”、不倫が信じられない「家族仲のよさ」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 習近平をつけ上がらせた「12人の媚中政治家」ほか
「週刊ポスト」本日発売! 習近平をつけ上がらせた「12人の媚中政治家」ほか
NEWSポストセブン